すべてが猫になる

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オール・ノット  (ねこ3.2匹)

柚木麻子著。講談社

友達もいない、恋人もいない、将来の希望なんてもっとない。 貧困にあえぐ苦学生の真央が出会ったのは、かつて栄華を誇った山戸家の生き残り・四葉。 「ちゃんとした人にはたった一回の失敗も許されないなんて、そんなのおかしい」 彼女に託された一つの宝石箱が、真央の人生を変えていく。(紹介文引用)
 
う~ん。。いつも新刊出たら読んでいる作家さんなのだけど、今回のはしんどかった。。主人公が苦学生で、アルバイトで出会った試食販売のスーパー販売員・四葉と出会ったことで少しずつ変わっていく。。という、導入から中盤までの流れだけは良かった。貧困女子、同性愛という現代のテーマを扱っているところを評価したかったのだけど。主人公の真央の人格がなんだか。。。真面目なのは立派だけど、夢もない友だちもいない、ただ働いて奨学金返して寝るだけっていう感じが好きではなかった。なんだか生きててもずっと頭に靄でもかかってるんじゃないかな。奨学金制度や家庭の事情に関しても、社会に激しく憤っている感じすらなく、婚約者に疑問を感じても抗う姿勢すらなくて。四葉さんの親友だったというミャーコに会いに行ったりしてる場合じゃないでしょ。そもそも、今がこれではなんのために大学に行ったのか。。貴重な宝石箱をもらって換金したら100万ちょっとになったけど全然私を救いませんでした、って一体何様のつもりなのか。。
 
で、途中からなぜかミャーコ視点になってしまうし。。この人も若い頃は同性にモテモテで青春を謳歌していた感じなんだけど、現在の姿がなあ。。あちこち付き合う女性を変えては飽きて別れてまたくっついて。四葉さんのこと言えた義理ではないと思う。
 
後半出てきた舞もわけがわからない存在。なぜ四葉さんの家に当たり前のように住み着いてしまうのか。。犯罪に立ち向かう感じでもなく。そして日本の近未来の章もただただ救いがなく。テーマだけがあって、何かを訴えている作品ではないんだよなあ。視点も時代もバラバラで。どうして貧困や四葉さん家の没落からの真央との絆、というふうに絞れなかったのかただただ疑問。まあ、それなりに入り込んでは読めたのは何かはあったのかもしれないけれど。息切れしちゃったのかなあ。最近柚木作品に当たりがない。