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歩く亡者 怪民研に於ける記録と推理  (ねこ3.8匹)

三津田信三著。角川書店

瀬戸内にある波鳥町。その町にある、かつて亡者道と呼ばれた海沿いの道では、日の暮れかけた逢魔が時に、ふらふらと歩く亡者が目撃されたという。かつて体験した「亡者」についての忌まわしい出来事について話すため、大学生の瞳星愛は、刀城言耶という作家が講師を務める「怪異民俗学研究室」、通称「怪民研」を訪ねた。言耶は不在で、留守を任されている天弓馬人という若い作家にその話をすることに。こんな研究室に在籍していながらとても怖がりな馬人は、怪異譚を怪異譚のまま放置できず、現実的ないくつもの解釈を提示する。あの日、愛が遭遇したものはいったい何だったのか――。ホラー×ミステリの名手による戦慄の新シリーズ始動!(紹介文引用)
 
三津田さんの新刊。「新シリーズ始動」ということでワクワクしながら読み始めたが、もしかしなくてもこれ刀城言耶シリーズのスピンオフ。。。主人公は言耶が非常勤講師を務める無明大学内の研究室、「怪異民俗学研究室」で言耶の助手を務めながら執筆もしている(ええいややこしい)天弓馬人。。。と、女子大生瞳星愛。愛が持ち込んだ怪異を、天弓が推理で現実の事件として解決していく、というスタイルのよう。怪談だけどミステリーという三津田さんらしい作品。
 
「歩く亡者」
愛が幼い頃体験した、祖母の暮らす田舎町の亡者道に関連した殺人事件。無職のモテ男とお嬢様育ちの女性の恋愛模様。切断された女性の遺体と行方不明になった男との間に何が?
まさかの人物が関連し、おぞましいトリックと真相が暴かれる。伏線が生きててちゃんと推理してる。田舎町にある言い伝えにはこういう怖いものが結構あるのかしら。。
 
「近寄る首無女」
平凡で読書好きの少年と、優等生で人気者のおぼっちゃまがお互いディクスン・カーの大ファンであることから家の行き来をする友人同士に発展。しかし彼の家は人間関係が複雑な上祖母が奇怪な話を少年に語り始める。。
登場人物がみんな胡散臭くて不気味。館ミステリーって感じ。首無女のトリックと犯人の正体に驚愕。
 
「腹を裂く狐鬼と縮む蟇家」
幼い男児たちが熊用の罠の檻の中で、腹を裂かれ殺される事件が連続して発生している村。そして遭難者たちが目撃した不自然に小さすぎる家。2つの関連は。。。
どこかでこの2つが絡み合うのだろうとは思っていたが、まさかこういうこととは。。長編で使っても良かったのではと思うぐらい恐ろしさと整合性が合致したミステリー。
 
「目張りされる座敷婆」
明和大学の女子大生が1人しか会員のいない妖怪研究会に入会。そこには美しい会長と、彼女を愛してやまない3人の仮会員たちがいた。やがれ彼らは妖怪体験旅行と称して不気味な民宿に出かけるが。。
首を絞めてくる老婆が出る部屋によく1人で泊まれるな、これでこそ妖怪オタクってやつかしら。。
 
「佇む口食女」
民俗学者・東季賀才が体験した口食女の怪を、愛が颯爽と解決する。昔の人や田舎ならではの秘密という感じで雰囲気がたまらない。なかなかの真相だったと思うが、最後の東季の正体や天弓・愛が誰なのかというサプライズにすっかり持っていかれた感。いやあ、もう最初っからあのシリーズみたいだなあ、とは思っていたのよ、ノリがちょっとギャグ寄りで軽いというか。それほど思い入れはないシリーズなのだけどなるほどなるほど、とニヤついてしまったなあ。
 
怖さはないけど、新シリーズってことは天弓モノとして数作出るのかしらね。あの2人の馴れ初めなども知りたいのでぜひ。