すべてが猫になる

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私雨邸の殺人に関する各人の視点  (ねこ3.5匹)

渡辺優著。双葉社

嵐の私雨邸に取り残された11人の男女。 資産家のオーナーは密室で刺殺され、世にも珍しい〈探偵不在〉のクローズド・サークルが始まる。 館に集ったのは怪しい人物ばかり。いったい誰が犯人を当てるのか。各人の視点からなされる推理の先に、思わぬ悲劇が待っている。(紹介文引用)
 
お初の作家さん。この本はネットかなにかで見て話題になっているようだったので読んでみた。ベタなクローズドサークル本格ミステリーでありながら、探偵役がいないってどんなのだ?と興味を持って。
 
登場人物数名の視点が交互にくる構成で、合間に<X>なる犯人の独白が挿入される。大金持ちの主人が密室となった書斎で殺され、犯人はこの中にいる、外部との通信は不可能、脱出も絶望的という状況下。ミステリサークルのメンバー、二ノ宮が「ホンモノのクローズドサークルだ!」とはしゃぎまくっているのがうっとうしい笑。こいつの倫理観どうなってんだ、、と最初はちょっとウンザリしていたが、まあ本格ミステリのパロディ作品みたいなものだからアリかと許すことにする。本来なら探偵役になるはずの一条はまともな人物のようでホっとするが、悪く言えば個性がない。迷い込んできた謎の自殺志願者も、屋敷のお嬢様たちも、仕事で訪ねてきた大人たちも、シェフたちも、なんだかウソっぽくてノリきれない。文体が若くて現代的で軽いので読みやすいのだけが良かったが。
 
まあ、結論から言うと「趣味には合うが、ミステリとしてはあんまり。。」といったところ。探偵役不在と言っても交互に推理はし合うわけで、期待していたほど既存の本格ミステリと仕組みが違っているわけでもなかった。これなら、「探偵役不在」を隠してサプライズ要素にしたほうが自分は楽しめたかな~~~~。