すべてが猫になる

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ハイスクール・パニック/Rage  (ねこ3.8匹)

スティーヴン・キング著。飛田野裕子訳。扶桑社ミステリー。

〈二年前のことだ。そのころから、ぼくのあたまはおかしくなり始めた―〉ぼくの名前はチャーリー・デッカー。プレイサーヴィル・ハイスクールの最上級生だ。ぼくは、代数のアンダーウッド先生と、歴史のヴァンス先生を父のピストルで射殺した。あっという間のできごとだった。しかし、だれもいまおこっていることを信じられない。警官隊がやってきてぼくたちを遠巻きに包囲している。ぼくとクラスメートたちは日常世界から切り離された世界に漂いだした。まるで白日夢のような、しかし緊迫した時間がながれていく。五月のある晴れた一日、教室で一体なにがおこったのか?モダンホラーの巨匠スティーヴン・キングが高校生の不安定な心の世界を、同世代の視点からあざやかに描いた、異色の青春サスペンス小説。(裏表紙引用)
 
再読。
 
扶桑社ミステリー文庫では<バックマン・ブックスⅡ>の扱い。バックマン名義での第一作となる。「バックマン」とはキングの別名義<リチャード・バックマン>によるもの。77年の作品。な、なつかしい。。この作品はキング自らが絶版にしたという逸話もあり(社会的影響を懸念して)、もうこの作品はどの表紙でも手に入らない、はず。
 
簡単に言えば多感な高校生がうまくいかない日常やイライラさせる大人にキレて学校で銃を乱射し教師を2名殺害し、クラスメイトを人質に立てこもるという話。思春期の鬱屈が見事に描かれているとは思うが、あまりこの作品に好意的な感想は持っていない。アメリカだからこんなものなのかキングの作風なのか分からないが、主人公チャーリーが面白がって大人に浴びせる暴言がほぼ下ネタで、はっきり言って子どもが嬉しそうに何を言ってんだかという感じで大人には全然面白くない。
 
この作品の特徴はやはり人質になったクラスメイトたちの落ち着きぶりというか、まるでホームルームのような状態になってしまうこと。現実と虚構の区別がついていないのか、これぞ10代の姿というものなのか。パニックになっている外部の大人たちとの落差が激しい。ラストはクラスメイト全員がキレて終わるのかと期待したがそうもならずちょっと不完全燃焼。まあ一気に読ませる面白さはあるが、まさにB級。