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人面瘡  (ねこ4匹)

横溝正史著。角川文庫。

「わたしは、妹を二度殺しました」。金田一耕助が夜半、遭遇した夢遊病の女性が、奇怪な遺書を残して自殺を企てた。妹の呪いによって、彼女の腋の下にはおぞましい人面瘡が現れたというのだ……。妖異譚に科学的な解決と深層心理の解明を加えた表題作に、本格ミステリーのバイブルといわれている「蜃気楼島の情熱」ほか三編を収録。(裏表紙引用)
 
再読。
金田一耕助シリーズの短篇集。ホントに読んだことがあるのかと思うぐらいどれも記憶に残っていなかった。。(まあ、昔過ぎるからね)どのお話もおぞましく恐ろしく、独特の妖艶さがあり面白かった。
 
「睡れる花嫁」
アトリエで腐乱死体となって発見された花嫁。画家の男は、女の死後も数日間死体を愛でていたことにより逮捕される。その数年後、同じアトリエでまた同じ事件が。
ちゃんとミステリーとして着地するから面白いね。病的嗜好と冷酷さが際立った。
 
「湖泥」
ある農村で半目しあう北神家と西神家。ある1人の女性を巡り、争いが起きる――。
トリックもあり意外な犯人もありで面白いのだが、死んだ女性の片目が義眼だった、というだけでこの牝豚だの畜生だのと罵倒する「巡査」が衝撃すぎた。
 
「蜃気楼島の情熱」
作品集の推し位置作品。金田一パトロンの久保が旅行先の島で事件に巻き込まれる。友人の志賀の二番目の妻がベッドで絞殺されていたのだ。志賀には以前アメリカ人の妻がおり、同じように殺され志賀が逮捕されたという過去がある。真犯人は志賀の友人の男であったが、今回その男が同じ宿に宿泊しており。。
また義眼が出てきた(笑)。なかなか複雑な人間関係。田舎だからか閉塞的なのがまた恐怖を煽る。
 
「蝙蝠と蛞蝓」
これちょっと前にBSで池松壮亮主演でやってたやつ!栗原類とか冨永愛とか出てて、凄く雰囲気あってめっちゃ良かった。金魚鉢のトリックやら作家志望の学生が書いた殺人小説とか読み応えがあった。視点が青年で、文学的で異色な感じ。めっちゃ好き。
 
「人面瘡」
この表題作が一番弱かった気がするのは私だけ?人面瘡がホンモノぽくてそこは良かった。奔放な女性と堅い女性姉妹のいざこざや乱れた男女関係などなど、推理小説としてはなかなか。
 
以上。
ハズレなし、どれも読み応えがあって楽しかった。時代モノなのに横溝さんの文章はサクサク読めるのが不思議。多少元の文体を読みやすくいじってるだろうけど(さすがにそのままは現代の読者に合わないからか)。。だいたいどのお話も、今までこのような凄惨で禍々しい事件はなく、、、みたいな口上があるだけのことはある。動機は時代を反映しているな~と思うものや俗物的なものまで。