すべてが猫になる

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空をこえて七星のかなた  (ねこ3.8匹)

加納朋子著。集英社

大丈夫。昼間だって、見えないけれど星はそこにちゃんとあるから。 南の島で、山奥のホテルで、田舎町の高校で。 星を愛し星に導かれた人々が紡ぐ七つのミステリー。 「南の島へ行くぞ」突然のパパの言葉で石垣島へ旅することに。正直言って、あんまり気は進まない。家族旅行といえばママも一緒だったのだ、去年までは――(「南の十字に会いに行く」) 小学四年生の九月のこと、同級生の過失で私の右目は取り返しのつかない怪我を負った。世界はぼやけて頼りない姿に変わり果ててしまった。星降る夜に大事な友達と交わした約束も――(「星は、すばる」) 廃部寸前のオカルト研究会、天文部、文芸部。生徒会に必死で部の存続を訴えると、「じゃあ、スぺミス部ってことで」と、とんでもない提案が――(「箱庭に降る星は」) 読み終えたら世界が変わる! 〈日常の謎〉の名手が贈る、驚きと爽快な余韻に満ちた全七話。(紹介文引用)
 
加納さんの、星をテーマにした連作短篇集。
7編の短篇に出てくるエピソードや人物が最終話で綺麗に繋がる体裁で、最後にあああの人はこの人だったのかーーー、が怒涛のように明かされていく気持ち良さ。石垣島へ旅する少女と父親、クラスメイトに右目を突かれ視力のほとんどを奪われた少女、廃部寸前のクラブが副会長を通して合併、アパートに住む美女、巨大宇宙船に小惑星がぶつかって負傷した少年――。繋がっているのは「星」「宇宙」のみと見せかけて実は全てが1つだったという結末。それだけで立派に作品を完成させているのだけど、1つ1つのお話が優しくて前向きで力強かった。特に「星は、すばる」で少女が抱えていた秘密を明かすことにより人生の大きな一歩を踏み出す姿や「箱庭に降る星は」での天文部員の冤罪を晴らす少女のカッコ良さには痺れた。第1話ではあまりに人と人との繋がりが都合が良すぎてこの作品は合わないかなと思ってしまった、加納さんじゃなかったらやめてたかも。読んで良かった。