すべてが猫になる

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1ミリの後悔もない、はずがない  (ねこ3.7匹)

一木けい著。新潮社。

ネクストブレイクはこの作家! 心揺さぶる恋を描く鮮烈なデビュー作。 「俺いま、すごくやましい気持ち……」わたしが好きになったのは、背が高く喉仏の美しい桐原。 あの日々があったから、そのあと人に言えないような絶望があっても、わたしは生きてこられた――。 ひりひりと肌を刺す恋の記憶。出口の見えない家族関係。人生の切実なひと筋の光を描く究極の恋愛小説。 第15回女による女のためのR-18文学賞読者賞受賞作。(紹介文引用)
 
「悪と無垢」がまあまあ良かったので気になっていたこちらを。甘酸っぱさやヒリヒリした痛みを描いた恋愛小説集、って感じかな?
 
「西国疾走少女」
経済的にも精神衛生的にも恵まれなかった中学時代を回想する女性・由井。転校生桐原との甘酸っぱい恋愛。「うしなった人間に対して、1ミリの後悔もないということがありうるだろうか」という言葉が刺さった。
 
「ドライブスルーに行きたい」
由井の友だちだったミカの現在と過去の物語。学校一のモテ男だった、元好きだった男と再会したが、あの頃の輝いていた彼は見る影もなく――。
流されてこういう関係を持ってしまう心理がよく分からんのだが。。過去の小さな夢が叶うシーンはなんだか良かった。たいした幸せではないのだけど、これがリアルなのかも。
 
「潮時」
由井を苛めていた女子・加奈子のすさんだ現在と、由井の夫雄一が飛行機搭乗中トラブルに巻き込まれるお話。雄一の過酷な少年時代が痛々しく、これは由井と合うだろうなと思った。人って年を取って1人になると色々悔やむんだろうな。悔やんでもやった側が報われることはないんだろうけど。この物語に出てくる2人のように。
 
「穴底の部屋」
各家庭で色々な価値観や常識があるのは仕方ないと思うけど、自分の皿の残り汁を義両親が鍋に戻しておじやにする、っていうのは絶対むりだわ。。。我慢の積み重ねっていつか爆発するよと思わせるお話。こういうだらしない関係も信じられないなあ。。嫌なことは全て自分自身が原因だと気づくあたりうまいなと思わせる。
 
「千波万波」
由井の娘・河子視点の物語。由井のつらかった過去と当時の恋愛が現在の幸せを阻むものでなくて良かった。色々な登場人物が何十年も経って同じ空の下で繋がっていく感じ。
 
以上。
恋愛小説って生理的にちょっと合わないシーンが多いわねと(お察し下さい)。不倫をテーマにしているものが多いのか??どうも彼らの貞操観念というか倫理観というか清潔感というかだらしなさが生活の不満やうまくいかなさと繋がっている気がして受け入れ難かった。辛い子ども時代を過ごした少女が幸せになっているのは救いだったが、全体的に漂う「諦め」「みんなこんな感じだろう」的気だるさが妙にリアルで、いかにも現代女性に受けそうという印象を持った。