すべてが猫になる

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悪魔が来りて笛を吹く  (ねこ4.6匹)

世の中を震撼させた青酸カリ毒殺の天銀堂事件。その事件の容疑者とされていた椿元子爵が姿を消した。「これ以上の屈辱、不名誉に耐えられない」という遺書を娘美禰子に残して。以来、どこからともなく聞こえる”悪魔が来りて笛を吹く”というフルート曲の音色とともに、椿家を襲う七つの「死」。旧華族の没落と退廃を背景にしたある怨念が悲劇へと導いていく――。名作中の名作と呼び声の高い、横溝正史の代表作!!(裏表紙引用)
 
再読。
金田一耕助シリーズの中でも2,3番目に好きな作品。映像化作品もいくつか観ているし、原作は再再読かも。よって堂々のネタバレでお送りします。未読の方はご注意下さい。
 
 
 
 
 
 
時系列では黒猫亭事件と夜歩くの間に金田一が関わった事件らしい。没落した旧華族間で起きた、近親相姦による復讐事件で、シリーズ中でも1,2を争う醜さと陰湿さに満ち溢れている。椿子爵が作曲し演奏するソロフルート曲が毎回事件現場を彩っており、それが流れていればトリックなど不要というぐらい。「砂占い」というオカルトじみた現場に現れる「悪魔の紋章」がさらに事件を混迷させ恐怖感を煽っている。ちなみにこのトリックに金田一の帽子が関連しているのも面白い。焦る犯人が見もの。
 
犯人については、その曲に使わない指があるということから指の欠損した人物が犯人だということが当時かなり衝撃的だったため、何年経とうと忘れることはない。そりゃこれだけ歪んだ関係で産み落とされては怨んで当然というもの。金田一も曲を演奏する姿を最初に見ていれば、、というところが悔やまれる。金田一が東京と明石を行き来するのも珍しく新鮮。今回は磯川警部ではなく出川警部が金田一のバディとなるが、この出川刑事もなかなかの調査力。
 
おそらく痣の遺伝なんて科学的根拠なさそうだな(ボソッ)。。でもそこがいい!
 
ミステリ的には弱いのかもしれないが、、戦後の乱れた貞操観念を余すところなく描き、それを恐怖まで高めた最高傑作だと思う。