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さっちゃんは、なぜ死んだのか?  (ねこ3.8匹)

真梨幸子著。講談社

ホームレスの女性が、公園で殺害されているのが発見された。犯人も動機も不明。彼女はなぜ、殺されたのか? 事件に興味をもったフリーターの女性が、不思議な縁で、被害者の人生に潜む嘘をひとつひとつ暴き、真実に近づいていく。巧妙な罠と高速で展開するストーリーに、いつの間にか目が離せなくなる。そして、ある瞬間に気づく。#さっちゃんはあなただったかもしれない #さっちゃんはわたしだったかもしれない(紹介文引用)
 
バブル時代広告代理店に勤めていた公賀沙知が、やがてホームレスとなって公園で殺害された。マンション清掃の男が逮捕され拘置所自死を遂げたが、氷河期世代のフリーター関口祐子は自分の部屋の巾木に公賀沙知と落書きされていたことをきっかけに沙知の死の真相を追い始める。さっちゃんは、あなただったかもしれない――そんなどこにでもいる女性の転落劇を真梨さんらしいイヤミスで描く。
 
「祐子」が「ゆうこ」以外の読み方をすることを早々に明かされているので、「と、いうことは」である。が、一体死んだのは誰で誰がなぜ殺したのか、を焦点としているのでそれほどそのネタバレが障害にはなっていない、かも。結局最後まで翻弄されてしまったし。毎度ながらの複雑トリックでややこしいが、真梨さんにしては易しいほうか。謎解きよりも、バブル世代女性がそれほど当時恩恵を受けていないことや氷河期世代の就職の難しさ、生きづらさなどがリアルで面白かった。「あなただったかも」と言うほど誰の身にも起きうることだとは思えないが、不器用さと不運が重なった女性たちの生きざまを見せつけられた。内容は毎度ながら軽いけどね。