すべてが猫になる

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プロジェクト・インソムニア  (ねこ3.8匹)

結城真一郎著。新潮社。

「年齢・性別・属性の異なるメンバーが夢のなかで生活を共にする」。 特殊睡眠導入剤〈フェリキタス〉の開発で莫大な財を成した、ソムニウム社による極秘人体実験、〈プロジェクト・インソムニア〉。被験者に選ばれた蝶野は、失意の日々から一転、自らの願望を〈クリエイト〉できる〈夢〉の世界に魅了されてゆく。 しかし、とある〈疑念〉の発露が、完全なる理想郷を、突如おぞましい悪夢へと変貌させる。ここは夢か、それとも――。蝶野のかつての盟友、蜂谷が囁く。(紹介文引用)
 
「#真相をお話しします」が良かったので、長篇となるこちらを。
なるほど、特殊設定ミステリということでなかなか複雑。AIのゲーム内をイメージすればだいたい合ってると思う。実際それは被験者の夢の中で、被験者が7名、それ以外の人間はエキストラ(多分モブ的なもの)か被験者がクリエイトしたもの(好きな人間を登場させることができる)。その中でそれぞれ事情のある性別も年齢もバラバラの7人が架空空間で生活を共にする。生活を共にする、と言ってもほんとにアクションゲームみたいなことしかやってないような。食事したり入浴したりブラブラしたり、といった本当の生活っぽいことをする空間ではなさげ。
 
そんな<ユメトピア>内で殺人が起きるというお話。現実では死なないんだけど、「自覚を失くした状態で他のドリーマーに殺されるとリアルでも死ぬ」とか「明確な殺意がないと殺せない」「やられる側が殺される、と認識している場合のみ殺される」というルールがある。自覚を取り戻すには、ユメトピア内に生息?している、胡蝶(空にある)を見つめることで「これはユメトピア内だ」と認識できるという仕組み。ユメトピアに死体が出現する条件にも色々あって、ドリーマー本人であること(死体は消える)ドリーマーの潜在意識の投影であるとか、ドリーマーがクリエイトしたものだとか、色々覚えることが多い。
 
まあそんなこんなで色々会社側や殺人者、被験者にも思惑があってだね。その条件下をクリアして連続殺人を行えたのは誰だ?という謎が面白かった。頭痛くなってきたけど。被験者がみんなあまりいい性格をしていないので、そっちのほうがキツかったかな~。。特に主人公の恭平、結構下劣だったり身勝手だったりするのよね。この状況下に置かれて、人間がまずやりたいことって戦闘や会話か?とは私も思っていたけど。だって自分を自分の理想の容姿で出現させられて、他人の誰でもユメトピアに出現させてその人と好きにできるのよ?(倫理的にアウトだと思うが、だからこそね)
 
それはさておき、ミステリー的にはまあまあ及第点かと。それなりに意外性もあるし整合性も取れてるのはさすがだったけれど、犯人の状態がそれだった、という意外性ひとつではインパクトとしてはもう一つかなと。ただ、物語の終わらせ方が感動系だったのでまとまりはあった。もう少し読みやすいと話題になったかもね。