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メナハウス・ホテルの殺人/Murder at the Mena House  (ねこ3.8匹)

エリカ・ルース・ノイバウアー著。山田順子訳。創元推理文庫

若くして寡婦となったジェーンは、叔母の付き添いでエジプトのカイロに建つメナハウス・ホテルに滞在していた。異国の地での優雅なバカンス。だがホテルの客室で若い女性客が殺害され、第一発見者となったジェーンは、地元警察に疑われる羽目になってしまう。疑いを晴らすべく真犯人を捜そうと奔走するが、さらに死体が増え……。アガサ賞デビュー長編賞受賞、エジプトの高級ホテルを舞台に起こる事件を描く、旅情溢れるミステリ。(裏表紙引用)
 
うん、面白かった。アガサ・クリスティの名を冠したミステリー賞の中で1番それっぽい作品だったと思う。舞台がエジプトというのもそれっぽいし、どちらかというとポアロよりジェーン・マープル系だな。
 
30歳のアメリカ未亡人ジェーンは叔母と共にエジプトの高級ホテルに旅行することになったが、ホテルで出会った派手で感じの悪い娘・アンナの他殺死体の第一発見者となってしまう。警察に疑われたジェーンは、銀行家を名乗る紳士レドヴァースと調査に乗り出すが…。
 
数ある創元推理社のヒロインの中ではかなり印象のいいほう。ちょっと出しゃばりなのが玉に瑕だが、行動力と知性があり、もともと夫のひどいDVに悩まされていた過去があることから女性読者の同情は得やすい気がする。そして相手役?のレドヴァースがなかなか胡散臭い。最初に印象が悪いとちょっといい人だと分かった途端輝くものだし、男を信じられないジェーンにはちょうどいいんじゃないかな。ホテル内をちょこまか不法侵入したり、様々な相手を疑ったりと緩急もしっかりしていてテンポもいい。命を狙われるあたりも定番すぎて、読者の楽しめる塩梅をわかってるな~って感じ。
 
最後に皆を集めて推理を披露するスタイルではないけれど、ロマンスあり冒険ありで好みだった。続編もあるようなので邦訳が楽しみ。