すべてが猫になる

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少女は卒業しない  (ねこ3.6匹)

朝井リョウ著。集英社文庫

今日、わたしは「さよなら」をする。図書館の優しい先生と、退学してしまった幼馴染と、生徒会の先輩と、部内公認の彼氏と、自分だけが知っていた歌声と、たった一人の友達と、そして、胸に詰まったままの、この想いと―。別の高校との合併で、翌日には校舎が取り壊される地方の高校、最後の卒業式の一日を、七人の少女の視点から描く。青春のすべてを詰め込んだ、珠玉の連作短編集。(裏表紙引用)
 
朝井さんの初期短編集。
もうすぐ取り壊されることになる校舎を前に、卒業式当日の7人の少女たちのそれぞれの胸の内を描いた甘酸っぱい物語。
 
「エンドロールが始まる」
先生に片思いしている女子が、図書室でだけは顔を近づけてもいいという理由からそこに通いつめていたというところが切ない。
 
「屋上は青」
ダンサーを目指す幼馴染の尚輝と、優等生の孝子。なんらかの特殊な技能や他人に認められる才能、地位に憧れ自分を卑下することはない。優等生だって大人になったらそれが強力な武器になるんだから。
 
「在校生代表」
在校生の亜弓の卒業生へのなが~~~~~~い送辞だけで綴られている作品。いや、ちょっとこれはやりすぎてて怖かった。この年代の特に浮いているわけでもない普通の女の子がこんな大勢の前で恋愛なんていう高校生にとって究極のプライバシーを延々と語るだろうか。。お笑い芸人みたいなノリのセリフも引いた。。
 
「寺田の足の甲はキャベツ」
バスケ部員同士の交際と別れを描いたお話。花火のシーンが泣ける。。これで別れなきゃいけない、というのが未熟さの表れで、誰にも経験のあることかもしれない。ただ、タイトルがあまり効いていなかったような。うまいこと言えてないというか。
 
「四拍子をもう一度」
卒業ライブでトリを務めることになったバンドの衣装やメイク道具が盗まれた。元々当て振りのバンドだったため、本番で驚きの手段に出るが――。
学校に1人くらいの確率で、こういう才能のある子はいる気がする。青春だなあ。
 
「ふたりの背景」
帰国子女のあすかは、クラスで目立つ里香や真紀子に疎まれ始める。特殊学級の生徒・正道と仲良くなったからだ。あすかと正道は同じ美術部に入部し、あすかはやっと自分の居場所を見つけた気がした。
里香に対しての「僕の目に、あなたは見えなかった」がすごく良かった。
 
「夜明けの中心」
剣道部エースの駿と交際しているまなみと、剣道部部長香川の三角関係。誰もいなくなった校舎で、まなみと香川の会話からさまざまな真相が明らかになる。このお話だけちょっと凝っていて怖かった。きっとまなみは将来、駿や香川との出会いと別れについて何度も語ることになるんだろうな。料理人になったきっかけとして。
 
以上。
う~ん、まあ初期だからね。朝井さんが10代の頃の作品なのかな。青臭くて、やはりまだ言葉の選び方が独特ではないというか。自分の言葉じゃなくて、どこかで見たことのあるよくある言葉をそのまま再利用している感じ。瑞瑞しさや若者の繊細な視点の片鱗は見えるけれど、浮き彫りにまではしていないかな。ちょっと大人が読む小説とは言い難かった。