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絞首商會  (ねこ4.2匹)

夕木春央著。講談社文庫。

大正時代の東京。秘密結社「絞首商會」との関わりが囁かれる血液学研究の大家・村山博士が刺殺された。不可解な事件に捜査は難航。そんな時、遺族が解決を依頼したのは、以前村山邸に盗みに入った元泥棒だった。気鋭のミステリ作家が描いた分厚い世界と緻密なロジック。第60回メフィスト賞受賞のデビュー作。(裏表紙引用)
 
夕木さん2冊目。「方舟」が良かったので、文庫化したデビュー作をおためしで。
うん、こちらもとても良かった!なんなら「方舟」より好きかも。ラストの驚愕だけで言えば「方舟」に軍配が上がるけれど、世界観やキャラクター、作風は断然こちらのほうが好み。大正時代が舞台の完全本格ミステリーなので、私にドンピシャ。メフィスト賞はもう読まなくなったので、これがそうであったことにはビックリだけど。なんといっても、探偵役が人嫌いの美青年で元泥棒っていう……笑。自分の家に泥棒に入った男を探偵として被害者の妹が依頼するかね?笑 でもそういう設定が好き。ワトスン役の画家・井口くんもよく働くしツッコミもうまいし、容疑者たちも一人一人きっちり怪しい。
 
最初に様々な国籍の人々が出てきたり舞台がヨーロッパに移ったりするのは戸惑ったけれど、「絞首商會」というテロ軍団が絡んでいるのでそのあたりの展開は必須。井口くんの姪の峯子ちゃんが何度も襲撃されたり井口くんがスーツ着て横領を暴きに行ったりとアクション的な面白みもあるので飽きにくいし。
 
ミステリ的には容疑者たちが今まで読んだことのない驚きの動機であることを企んでいたところが良かった。1つ1つ論理的に屍体を庭に移動した謎や手紙の秘密などを暴いていくし、容疑者たち1人1人を掘り下げていくのでスッキリ。人としてどうであるべきか、を説いていくのもドラマっぽくて熱かったし。地味だし一般受けはしないだろうけども、本格ミステリーファンにはオススメ。絶対シリーズ化して欲しいなあ。