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母親からの小包はなぜこんなにダサいのか  (ねこ3.9匹)

原田ひ香著。中央公論新社

昭和、平成、令和――時代は変わっても、実家から送られてくる小包の中身は変わらない!? 業者から買った野菜を「実家から」と偽る女性、父が毎年受け取っていた小包の謎、そして、母から届いた最後の荷物――。 実家から届く様々な《想い》を、是非、開封してください。(紹介文引用)
 
原田ひ香さん3冊目。ハズレなし、「母親からの小包」をテーマにした連作短篇集、どれも心が温まる話ばかりでとても良かった。
 
「上京物語」
盛岡から上京してきた美羽は、口うるさく考えが古すぎる母親からの解放を喜んでいたが、思い描いていた東京ライフにはほど遠く…。
不動産屋の町田さんが母親のようで良かった。田舎に嫁ぎ満足していると思っていた母親にも過去に色々あったのだと分かり、美羽の人生も回り始める。
 
「ママはキャリアウーマン」
大手会社を寿退社しかわいいおうちでの専業主婦生活を満喫している莉奈。だが女手一つでキャリアを築いた母親に働くことを強要され…。
母娘の口ゲンカはもう読んでいられないくらい。どちらの気持ちもわかるというか。こういう母親だとしんどいだろうけど、本当の気持ちを伝えれば伝わるものがある。それが母親というものだ。…と、同時にカッコイイはずの母親の小包のダサさにホっとするシーンが好き。
 
「擬似家族」
虐待されて育った愛華に完璧な彼氏ができた。通販で注文した小包を実家からだと偽り続ける愛華、ついに彼からプロポーズされ大ピンチ。
嘘をついてもいつかはバレるし、真実を話せるぐらい大事な人に愛されて良かった。
 
「お母さんの小包、お作りします」
不倫の果てに仕事をやめ実家に帰ってきたさとみは、母が自分のところの野菜を通販で売る仕事に協力するが…。お母さん「風」の小包、いいと思うけどな。ムリしていたところもあると思うけれど、さとみのセンスや才覚が発揮されたことに変わりはないわけだし。
 
唯一の身内だった父が亡くなり、実家の後始末にてんやわんやの拓也。24年間毎年良質の昆布を送ってくれている女性は自分の祖母ではないかと考えるが…。
隣人の藤井さん、いいひと。母親がいない拓也にダサい小包を送ってくれる。色々判明したけれど、男女ってどこからが裏切りなんだろうね。何もなかったからって、自分なら夫にこういう存在がいたら嫌だけど。。唯一の男性視点モノだったのでちょっと距離を置いて読んでしまった。
 
「最後の小包」
母の再婚相手「まさお」がどうしても好きになれない弓香。だが母が急死したことで関係性が動き始める…。この子だけはワガママで言葉も悪くてあまり好きになれなかったが、ちょっと昔の自分に似てるからかも?葬儀にぐらい出なさいよ。まだ子どものままだったのかな。幸せになりますよう。
 
以上。
どの小包もダサくてあったかくて良かった。タイトル、ディスっているようでいて愛情を感じる一文だと思う。もうこれからはダサい母親っていうのは淘汰されていきそうだけど。これは私の懐古主義かな。中には毒親?って思うような母親もいたりして、だけどほとんどの家はこんなもんなのかな?それで温かい家族愛にまで持っていける原田さんの手腕はすごいな。とてもいい作品集だった。