すべてが猫になる

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人生オークション  (ねこ3.9匹)

原田ひ香著。講談社文庫。

不倫の果てに刃傷沙汰を起こして謹慎中のりり子叔母さんと、就活に失敗してアルバイトをする私。 一族の厄介者の二人は、叔母さんのおんぼろアパートの部屋にあふれるブランドのバッグから靴や銀食器、 着物までをせっせとネットオークションにかけていく――。すばる文学賞作家が描く、ゆるやかな再出発の物語。(裏表紙引用)
 
原田ひ香さん2冊目。いい、この人いい。すっかりファンになった。2編を収録した中編集。
 
「人生オークション」
不倫、離婚、相手の妻を刺して前科のついた叔母の面倒を見る瑞希。山と積まれた本や食器やブランドもののダンボール。いい加減すぎる叔母の生活をなんとか立て直してやろうと瑞希はネットオークションでの断捨離を決行する。
この叔母、決して人好きがしたり理解できる要素があるわけではないのだが、なんだか憎めない感じがする。だから瑞希は叱り、倦みながらも協力したんじゃないかな。オークションで友人になったヒヨ子の存在がいい発破になってる。叔母の事件の真相にはビックリ。だけど、叔母というより何も生活に張りがない瑞希の再出発の話がメインになっていると思う。叔母より瑞希のほうが好感持てなかった、最初は。
 
「あめよび」
個人的にはこちらのほうがもっと良かった。眼鏡屋で働く美子と、ハガキ職人の彼氏輝男。愛され順調に交際しているが、美子の希望は結婚。しかし輝男は「自分には代々伝わる、結婚相手や身内にしか言ってはならない諱(いみな)がある」と打ち明け、結婚する気はまったくないと取り付く島がない。
輝男の秘密に心からビックリ!しかしこれ、本文には明記されないのでモヤるかも。すごくエラそうな解説者(みんなそう言って怒ってる^^;)が、平山姓と言えば…これが分からないのは近代史の勉強不足と書いていたので調べてなんとなく理解した。これは美子、ショックかもね。輝男がそうであることが、じゃなくて知らなかったことが。
ラストは本来、スカっとするはずなのだけど美子の涙のほうが印象的。なかなか挑戦的なお話。
 
以上。「あめよび」を読んで、並の作家ではないなと思った。ちょっと震えたもん。「三千円の使いかた」も良いけど、断然こちらのほうが好き。他の作品もどんどん読んでいきたい。