すべてが猫になる

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さよならの儀式  (ねこ3.2匹)

宮部みゆき著。河出文庫

長年、一緒に暮らしてきた仲良しのロボットと、お別れの時がきた。表題作「さよならの儀式」他、親子の救済、老人の覚醒、三十年前の自分との出会い、無差別殺傷事件の真相、別の人生の模索……SFが持つ無限の可能性が宮部みゆきの語りの才能と結びついた八編。宮部ワールド新境地、初のSF作品集。(裏表紙引用)
 
宮部さんのSF短篇集かあ、う~ん、、と読み始め、う~ん、、と思いながら読了。個人的にSFが得意ではないというのもあるが、宮部さんの語りの才能、という部分にはそれほど重なっていなかったような。。。
 
「母の法律」
「マザー法」という名前自体が時代にそぐわないような。虐待児を救済する記憶沈殿措置と養護家庭にまつわる法律の不備などなど。そもそも関係者がなぜ本当の母親のことを洩らしてしまったのだろう。そりゃろくなことにならんでしょ。
 
「戦闘員」
やもめ暮らしの達三は、散歩コースで偶然見かけた防犯カメラを破壊する少年に注意をした。それからというもの、やたらと街でないはずの防犯カメラを見かけるようになるが…。無機質なものに生命が宿るのホラーっぽい。
 
「わたしとワタシ」
15歳の自分がタイムワープして45歳のわたしに会いに来た。しかし独身で容姿の衰えた自分を見たかつてのワタシはショックを受け…。これはキツいな、お互いに。今の自分がそれなりに落としどころを見つけて幸せに暮らしているつもりでも、15歳にはその良さは分からんでしょ。
 
「さよならの儀式」
ロボット廃棄センター?で働く男は、ロボットに名前をつけて別れがたい思いをしている少女に真実を見せてやることにしたが…。結構意地悪だね。機械でも名前をつけて自分と生活していたのだから愛着が湧いても仕方なきかな。わざと人間の形に似せて作っているんだろうし。
 
「星に願いを」
逃亡中の殺人犯が、姉妹2人だけの家の庭に倒れている。そして妹は宇宙人に寄生され…。いっぱいいっぱいの姉のメンタルが壊れつつあるのと、宇宙人に征服されそうな状況とでカオスな展開に。
 
「聖痕」
「チヨ子」に収録されていたという噂を聞いたのだが、全く記憶にない。どうりでこの作品だけサスペンス風味で読みでがあったような。ネットで拡散されていくデマとサイコパスネタ。ラストだけ突拍子もないという感じで置いてけぼり。
 
「海神の裔」
ゾンビのお話だということしか分からなかった。方言のきつい老婆の語り形式なのが合わなかったかな。
 
「保安官の明日」
ある街の、「ザ・タウン」の真相…。これ、やり直す年齢を間違えてるのは確実なのにねえ。生まれつきの可能性もあるが。きょうだいが違うからってこの人もそうとは限らないような。
 
以上。
後半の方がまだ読めたかな。宮部さんにはSF作品も多いが、自分の思っている宮部SFとはまた違うような。もう少し人間の深部に切り込んだ作品が好きだな。