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映画を早送りで観る人たち ファスト映画・ネタバレ――コンテンツ消費の現在形  (ねこ4匹)

田豊史著。光文社新書Kindle)。

現代社会のパンドラの箱を開ける! なぜ映画や映像を早送り再生しながら観る人がいるのか――。 なんのために? それで作品を味わったといえるのか? 著者の大きな違和感と疑問から始まった取材は、 やがてそうせざるを得ない切実さがこの社会を覆っているという 事実に突き当たる。一体何がそうした視聴スタイルを生んだのか? いま映像や出版コンテンツはどのように受容されているのか? あまりに巨大すぎる消費社会の実態をあぶり出す意欲作。(紹介文引用)
 
興味のある題材だったので、電子書籍でちびちび読破。
内容はタイトルの通りで、Z世代と呼ばれる若者の中には映画やドラマを倍速で観る習慣を持っている者が多くいるという。あくまでその経験がある、という者も含む。ファスト映画という「数分で映画のいいところをつなぎ合わせてストーリーを把握できる映像」が流行った(もちろん違法)のも記憶に新しい限りだ。
 
個人的な話だが、40代の自分だってYouTubeを10秒飛ばししたり観たいところだけ観るなんてことはよくやる。チャンネル登録しているタレントや旅チャンネル、お笑いネタのものは絶対にやらないが、たとえばクッキング動画やストレッチ動画、日常の暮らし系なんかは観たいところだけ観る。大きな声では言えないが、年に1、2度くらいは映画があまりにつまらなかった場合(字幕に限るが)「早送り1」で残りの30分を観る、なんてことは割とやってしまうタイプだ。映画や監督への冒涜とか言われそうだがしゃらくさい。
 
それと似たようなもんかな?若者に限らないんじゃないの?と思って別にマウント取るつもりもなく読んでみたが、どうやら一部の若者にとって映画やドラマを倍速視聴する理由はちょっと違うらしい。サブスクの隆盛もあってとにかく彼らには膨大な作品を堪能する時間が足りない。だけど流行りにはついていきたい。ハズしたくない。だからネタバレを観てから安心して最初から観る。心を乱されたくない。最短距離でオタクになりたい。何者かになりたい。この本ではどうして今の若者がそうなったのかも具体的に記してくれているので、読みでがあるとしたらそこかな。
 
私は製作側の人間ではないので人に迷惑をかけなければ勝手にどうぞ、という感じだが、その一瞬で流れていくLINEグループの会話についていくために映画やドラマ、音楽を消費し、倍速視聴によって2時間の映画が1時間で観れた、タイパがいいと喜ぶ感覚にはどうも馴染めなかった。趣味ぐらい、人に合わせずに自分で好きなものを選んで自分の感想を持とうよ。