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殺しへのライン/A Line to Kill  (ねこ4.3匹)

アンソニーホロヴィッツ著。山田蘭訳。創元推理文庫

『メインテーマは殺人』の刊行まであと3ヵ月。プロモーションとして、探偵ダニエル・ホーソーンとわたし、作家のアンソニーホロヴィッツは、初めて開催される文芸フェスに参加するため、チャンネル諸島オルダニー島を訪れた。どことなく不穏な雰囲気が漂っていたところ、文芸フェスの関係者のひとりが死体で発見される。椅子に手足をテープで固定されていたが、なぜか右手だけは自由なままで……。年末ミステリランキング完全制覇の『メインテーマは殺人』『その裁きは死』に続く、ホーソーンホロヴィッツシリーズ最新刊!(裏表紙引用)
 
ホーソーン&ホロヴィッツシリーズ第3弾。
(参考までに。「カササギ殺人事件」のシリーズではありません)
 
「メインテーマは殺人」の刊行に先立って、オルダニー島で開催される文芸フェスの参加を決めたホロヴィッツホーソーン(むりくり)。多種多様な参加者が集う中、オルダニー島ではある送電線計画について反対派と賛成派で派閥が起きていた。不穏な雰囲気の中、文芸フェス主催者の夫が椅子に縛られ右手だけをそのままにした状態で殺害された。その後、妻も他殺死体で発見され…。
 
殺人事件の謎解きものとしても読み応えがあったのは言うまでもないが、登場人物を取り巻くいざこざのドラマやホーソーンと確執のあるアボットの存在が物語の肝だった。どの人物をとってみても怪しくない者はおらず、それぞれの職業に思い思いのウラがあった。正義マンとしては一癖も二癖もあるホーソーンの解決方法はやはりひねくれていて、読者としてもホロヴィッツから見ても「これで正しいのか?」と思わせるあたりがにくい。ホーソーンが犯罪者に手をかけている可能性を残し、ワトスン役のホロヴィッツの中にくすぶる不信感やいらだちが目立ち始めた。仲良しこよしの探偵コンビもいいが、こういう歪な関係性もまた本格探偵ものだけが持つ強みだろう。
 
大きな期待をかけなかったせいか、シリーズキャラとしての愛着が増したか、シリーズ中1番良かった。
さてホーソーンのリースの秘密とは。。息子との関係は。。早く続きが読みたい。