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巨大幽霊マンモス事件  (ねこ3.9匹)

二階堂黎人著。講談社文庫。

ロシア革命から数年経ったシベリア奥地。逃亡貴族たちが身を隠す<死の谷>と呼ばれた辺境へ秘密裏に物資を運ぶ<商隊>と呼ばれる一団がいた。その命知らずな彼らさえも、恐怖に陥る事件が発生! 未知なる殺人鬼の執拗な追跡、連続する密室殺人、<死の谷>に甦った巨大マンモス……。常識を超えた不可解な未解決事件を名探偵・二階堂蘭子が鮮やかに解き明かす!(裏表紙引用)
 
二階堂蘭子シリーズ第12弾。
「ユリ迷宮」に収録されていた「ロシア館の謎」の続編と考えるのもアリらしい。覚えてないけど。
 
本作は蘭子ら<殺人芸術会>がシュペア少尉の出題した事件を考察し合う「現代」の章と、シュペア少尉がセルゲイ・エフルーシという偽名で体験したシベリア南部<死の谷>連続殺人事件をシュペアと商隊長ルカ・フロローフの日記で交互に綴る1920年代の章におおまかに分かれている。ややこしいが。。めっちゃ簡単に言うとそうなる。
 
バイカル湖の北方にある<死の谷>の奥には金銀財宝が眠っているとされ、ロマノフ家のマンモスがそれを守っているという言い伝えがある。諜報部上官ハンスは、ドイツ人スパイのシュペア少尉を死の谷へ送り込んだ。しかしシュペア少尉とアナスタシア皇女はひっそり愛し合っている。シュペアが潜り込んだ物資の運搬グループ隊長フロローフも妻をカバノフ将軍に奪われており、運搬のどさくさに裏切る予定であった。
そして道中、白軍の中継所や死の谷で密室連続殺人が起きる。あちこちで出現する幽霊マンモスの正体とは?そしてラスプーチンが抱えている予言者の女たちは何を見たのか?
 
メモを必死でとりながら読んだのでなんとか概要は理解しつつ、手記の章に入ってからはあまりの面白さにサクサクと。謎の溶液の中に入っている三人の女も不気味だけど、魔女の館で出会った奇形の少女たちの存在がとっても魅力的。近頃はあまりこういう島田荘司的というか江戸川乱歩的なミステリーがないので、このシリーズの存在は貴重だと思う。トリックがアレでなければもっと良かったが。。。アンフェアではないけど、タブーを使っちゃったな。それでもよくできた仕掛けだとは思うけれど。マンモスの正体については、意外とそのまんまというか。島田さんならもっと驚く真相描けたろうにな。。
 
まあとは言え苦手な蘭子はあまり出ないのでイライラしないし、壮大で楽しめる作品かと。