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残穢  (ねこ3.7匹)

小野不由美著。新潮文庫

この家は、どこか可怪(おか)しい。転居したばかりの部屋で、何かが畳を擦る音が聞こえ、背後には気配が……。だから、人が居着かないのか。何の変哲もないマンションで起きる怪異現象を調べるうち、ある因縁が浮かび上がる。かつて、ここでむかえた最期とは。怨みを伴う死は「穢(けが)れ」となり、感染は拡大するというのだが──山本周五郎賞受賞、戦慄の傑作ドキュメンタリー・ホラー長編!(裏表紙引用)
 
以前から気になっていた小野さんのホラー作品を。
 
ルポルタージュのような体裁の小説。
時系列を逆に辿り、ある家の怪異にまつわる因縁を解き明かしていく。語り手は小野不由美さんを彷彿とさせる。同じく作家である「夫」が出てくるたびに「綾辻さん…」と連想してしまい、勝手にリアルと同調させて脳内脱線。そういう楽しみもありながら、過去を辿るたびに新たな怪異が語られる怖さも味わう。民俗学的概念や現代怪談を取り混ぜながら、あくまで合理的主義者の「作者」が主役であることに意義がある。リアルと混同させながら、現実にあった怪異と残穢の発祥を紐解いていくこのスタイルは、ミステリーの手法に近い。
 
と、この作品の特徴を述べたものの、個人的には評判ほどの怖さは感じなかった。至って普通だったな。ルポルタージュ風という「キャラクター」が発生しない小説だったことが一因かも。