すべてが猫になる

ヤフーブログからお引越し。

大人になれない  (ねこ3.6匹)

まさきとしか著。幻冬舎文庫

学校から帰宅し、母親に捨てられたと知った小学生の純矢。母の親戚・歌子の家に預けられたがそこはデブ女、無職の中年、67歳の引きこもりや毒親の老婆など、純矢が「生きてる価値ない」と思う大人の吹き溜まりだった。捨て子の自分も同類だと不貞腐れていたある日、「歌子が双子の姉を殺した」と聞き探り始めるが。大人になれない大人たちの感動ミステリ。(裏表紙引用)
 
まさきとしかさん6冊目。
本書は珍しく語り手が小学生の男児。酷い母親に虐待を受けながら育ち、かつ突然手紙一枚残して捨てられてしまう純矢。親戚だという知らない家に引き取られるも住人はみんなまともとは言えない大人たちばかり。純矢いわく「生きてる価値ない」。派手で信じられない程太ったマッサージ師の歌子、その毒親の政江、居候の無職男2人。
 
居場所がない連中ばかりだからこそ、純矢はなんとか馴染めたのかなと思う。マトモだったらそれはそれで肩身が狭かったのではないかな。文体がコミカルなのでユーモア系と言っていいのだろうが、状況はかなりヘビー。大学を出さえすれば公務員となって安定した生活が得られきちんとした大人になれると信じていた純矢の理想がガタガタと崩れていく。「生きてる価値ない」と大人をジャッジする純矢に好感はとても持てなかったが、あんな母親に育てられたと思えばまだまともに育ってるほうなのでは。。しかし全員がなんとなく、ほんとになんとなくいい方向へ進むだけで分かりやすく成長はしないので(大人も)、一体何が言いたかった話なんだろう?という気持ちに。歌子さんのモテっぷりはなんとなく分かるような気もするが。。「花子さんは本当にいるのか」というミステリー部分だけに集中して読むならまあ面白かったかも。