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英国屋敷の二通の遺書/A Will to Kill  (ねこ3.9匹)

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R・V・ラーム著。法村里絵訳。創元推理文庫

英国人が建築し、代々の主が非業の死を遂げたグレイブルック荘。数々の事件を解決した元警官のアスレヤは、財産家の主バスカーに請われて屋敷を訪れた。バスカーは何者かに命を狙われ、二通の遺書を書いていた。自分の死が不自然か否かによって、内容の違うどちらかが効力を持つ。それが一族や隣人たちの心をざわめかせるなか、ついに敷地内の礼拝堂で殺人が! だがアスレヤをさらに困惑させる事態が発生し……。インド発、英国犯人当て小説の香気漂う清新なミステリ!(紹介文引用)
 
インド発のコテコテ本格ミステリーということで読んでみた。作者はインド生まれのコンサルタントで執筆活動も行っているらしい。
 
さて、内容はなかなか。タイトルにもあるとおり、インドだと意識しなければイギリスものだと勘違いするかもしれないほど馴染みのある世界観。作中に「スマホ」という言葉が出てこなければ、時代設定まで誤解しそうだ。主人公のアスレヤは元警察官でなかなかの実力者だったらしく、個性が立ちすぎていない人物造形も悪くない。登場人物が多すぎて混乱するのが玉に瑕だが、1ページ目ですぐに依頼人との会話が始まるのでじれったさはない。ほどよい感じにダメ男ダメ女も配置されており、無関係そうな他人が混ざっていたりとミステリ的な難易度も高そうだ。
 
殺人事件を紐解くのに過去の事件や散りばめられていた伏線が次々明らかになる構成なので、本当に真面目な本格ミステリ。告白で終わるのかと思いきや、きっちりと全員を集めて謎解きをするシーンもある。ドラマティックな展開もあり、そのセンスはかなりのものかも。続編があるようなので、邦訳を期待。