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早朝始発の殺風景  (ねこ3.7匹)

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青崎有吾著。集英社文庫

青春は、気まずさでできた密室だ。始発の電車で遭遇したのは普段あまり話さない女子。二人は互いに早起きの理由を探り始め……(表題作)。部活の引退日、男同士で観覧車に乗り込んだ先輩と後輩。後輩には何か目的があるようだが(「夢の国には観覧車がない」)。不器用な高校生たちの関係が小さな謎と会話を通じて少しずつ変わってゆく。ワンシチュエーション&リアルタイムで進行する五つの青春密室劇。(裏表紙引用)
 
学園ミステリーがお得意の青崎さんの文庫新刊。今回のはノンシリーズの連作短篇集。登場人物は全て高校生で、1篇目のキャラクターがエピローグで再登場し物語を一つにまとめる構成。
 
「早朝始発の殺風景」
「殺風景」が苗字だとはビックリ。意味深なタイトルだったのでそれを知ってちょっと肩透かしだったのだけど、不穏な題材と雰囲気に合っていた。会話とスマホの内容だけでお互いが始発に乗り合わせた理由を解き明かしていくのが凄い。ところで発売日の漫画雑誌(コミックスも)って早朝にコンビニ入荷しないと思うんだけど。。どうでもいいか。
 
「メロンソーダ・ファクトリー」
文化祭のクラTのデザインを決めるためいつものファミレスでドリンクバーを楽しむ女子3人組。自分の提案したデザインより親しくないクラスメイトのデザインがいいと主張する友人2人にモヤモヤする真田だが…。この真相はミステリでよくあるやつ。ジュースで明かされる手法が良かった。全員男言葉なのが気になったけど。
 
「夢の国には観覧車がない」
フォークソング部の追い出し会でソレイユランドに来た部員たち。たまたま親しくない後輩と観覧車に2人きりになった寺脇だが、思いもよらぬ告白をされて…。完全密室、数分のドラマっていうのがいいね。実際この後輩の気持ちはどうだったのだろう?
 
捨て猫と兄妹喧嘩」
猫好きとしては黙っていられない題材だった。喧嘩の果てになんか兄妹がいい人みたいになってるけど、、2人の決断も含めてあまり奨励したくない内容だったな。まあ若いからしょうがないか。
 
「三月四日、午後二時半の密室」
卒業式のあと、クラスで浮いている煤木戸さんの家へ卒業証書を届けに行ったクラス委員の草間。熱で寝込んでいるはずの煤木戸さんの様子がなんだか怪しくて…。
なんだかんだ、これから先も離れられない友人になれるんじゃないかな、と思わせるところが良かった。一生会えないとしてもいい思い出、青春って感じ。
 
以上。エピローグで1話の2人と今までの登場人物が総出演。色々と意外なところで繋がるとかじゃなくて、ただ出てきただけなのでアレって感じ。青崎さんならもっと凝った謎を入れられそうなのに。1話の殺風景さんの企みも、そのままだったかな。
 
読みやすいしいかにも現代の若者という感じがして、なかなかの作品だと思う。個人的に、もうこういう青春モノには誰にも共感しなくなってしまったのが残念。懐かしさはあるけど、今と昔では越えられない溝があるな。若者向けかな。