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悪寒  (ねこ3匹)

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伊岡瞬著。集英社文庫

大手製薬会社社員の藤井賢一は、不祥事の責任を取らされ、山形の系列会社に飛ばされる。鬱屈した日々を送る中、東京で娘と母と暮らす妻の倫子から届いたのは、一通の不可解なメール。〈家の中でトラブルがありました〉数時間後、倫子を傷害致死容疑で逮捕したと警察から知らせが入る。殺した相手は、本社の常務だった──。単身赴任中に一体何が? 絶望の果ての真相が胸に迫る、渾身の長編ミステリ。(裏表紙引用)
 
名作「代償」以来2冊目の伊岡さん。
適当に選びすぎた、、、と後悔。「代償」の作家さんとは思えないほど稚拙な展開、魅力のない登場人物で終始ガッカリ。
 
製薬会社で贈賄事件の責任を取らされ山形に左遷された賢一は、上司のパワハラ、営業成績の不振、単身赴任による家族関係の悪化に日々苦悩していた。そんな中、妻から詳細不明の不審なメールが届く。やがて賢一は、妻が自宅で賢一の会社の常務を撲殺し逮捕された事実を知る。
 
平凡な一会社員の身に起きた出来事としては充分すぎるぐらいパニックになるであろうことは重々承知の上だが。全く何の役にも立たない賢一に怒り通り越して呆れてしまった。実母が重度の認知症のため、普段は妻に世話を丸投げ、東京に帰ってからも義妹に任せっぱなし。動いたとしても自分の保身に関わることのみ。会社役員たちのクズっぷりもさることながら、ここにきてなお会社に残れるとでも思っている態度にぶっちん。娘に嫌われるのも仕方ない。作中の「中年男性の鈍感さは犯罪」という言葉が印象的だ。まあ賢一もなんも悪いことしてないのに悲惨な目に遭いすぎで可哀想ではある。しかし女性キャラが出てくるたびに美人かどうかのジャッジが入るし、全編通して作者の「中年男性への甘さ」がチラついていい気分で読めなかったなあ。ミステリーとしても、どんでん返しとも言えないようなコロコロ事実が変わる展開ばかりだし結局推理らしきものもなしで。いつも後から刑事が「それを疑ってました」と現れるのなんだそれ。高校生の娘がいるんだぞ。この妻の言い分は女から見て有り得ないだろうて。
 
ただ、シリーズキャラらしい真壁刑事はちょっと良さげな雰囲気。あと1冊くらいは挑戦してみてもいいかな。多分ハズレを引いただけ。多分。