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忌物堂鬼談  (ねこ3.8匹)

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三津田信三著。講談社文庫。

得体の知れぬ何かに追われ、助けを求めて遺仏寺を訪れた由羽希。所有するだけで祟られるという「忌物」であふれた本堂で、住職の天山天空は彼女も忌物を持っていると告げる。何が起きたかをまるで覚えていない由羽希は、天空が調査をするあいだ毎夜寺に通い、忌物に纏わる怪異譚を聞くことになるが……。(裏表紙引用)
 
三津田さんの怪異談長編。最初短篇集だと思って手をつけたのだが、真ん中に3編ほどの忌物にまつわる怪談が挿入されている体裁の長編だった。
 
いやあ、これは面白い!かつ、怖い!
 
記憶を失った少女・由羽希が死者とおぼしき「砂歩き」に追われながらたどり着いたのは遺仏寺と呼ばれるさびれた寺。そこは母の実家であり、最近になって祖母が他界していた。由羽希の持つ祖母の遺品の櫛が怪異を呼び寄せていると指摘したのは天山天空と名乗る住職で――。
 
ちょっとコミカルさも入っているのかな?天空のキャラが美貌の関西弁の若者ってことで住職としてはかなり際立った個性を持っている。しかも、由羽希を助手として使い自分の趣味である怪談蒐集の文字起こしを頼んでくるという。由羽希の母の実家が親戚づきあいをしない、女性が家を継ぐ、などかなり特徴的で、不気味でさえある。遠巳家の変わった習俗なんかもあったり、家の秘密を探りながら恐ろしい怪異に巻き込まれていく展開がなんとも迫力。挟まれる怪談の一つ一つも、原因が分からなかったり敢えてモヤっと終わる感じなのが怖さ倍増。毎晩、一段ずつ上がってくるスリッパとかあちこちから掛かってきては告げ口をしてくる電話とか、全部がほんとに怖い、夜に読んで後悔。話としてもまとまっているし、読みやすいし気に入った。続編がありそうな終わり方なので期待したいな。