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罪の余白  (ねこ3.7匹)

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芦沢央著。角川文庫。

どうしよう、お父さん、わたし、死んでしまう―。安藤の娘、加奈が学校で転落死した。「全然悩んでいるようには見えなかった」。クラスメートからの手紙を受け取った安藤の心に、娘が死を選んだ本当の理由を知りたい、という思いが強く芽生える。安藤の家を弔問に訪れた少女、娘の日記を探す安藤。二人が出遭った時、悪魔の心が蠢き出す…。女子高生達の罪深い遊戯、娘を思う父の暴走する心を、サスペンスフルに描く!(裏表紙引用)
 
最近ハマっている芦沢さんのデビュー作。
 
高校生の娘を持つ心理学者・安藤。ある日妻を癌で亡くしてから、娘と2人きりで暮らしてきた。しかし数年後娘の加奈が学校の4階から転落死し失意のどん底に。そして加奈の死因は自殺ではなくイジメによるものだったという疑いが…。
 
安藤、早苗(心理学助教授)、加奈、咲(加奈の友人)、真帆(同)の視点でかわるがわる展開していく構成。読んでいくうちにすぐ加奈の自殺は咲と真帆によるイジメの結果であることが分かるが、読んでいて胸の悪くなるエピソードばかり。安藤がイジメの首謀者2人に復讐を決意するあたりから俄然面白くなり、どんな罠を仕掛けるのか、咲や真帆に贖罪の気持ちは芽生えるのか、など興味深い展開が続いた。咲の行動や安藤の人物造形が少し浅いかな、とは感じるものの、悪意に立ち向かう父親の姿に胸が痛くなった。特に安藤に惹かれる早苗の人物描写が卓越していて、感情を出せない、他人の心が分からない故に一生懸命な姿が良かった。(こういう人物が心理学者というのには無理があるかなとも思ったがまあデビュー作なので。。)
 
割と厳しい評価がある中、自分はまあまあスッキリしたので悪くない作品かなと。芦沢さんらしく、10代女子のヒエラルキーやその心理を描くのに長けているし。一緒にお弁当を食べたり教室移動をする相手がいない、ってそんなに重要かね。。って大人になれば分かるけれど、この子たちにはそれが世界の全てという感じ。