凜の弦音 （ねこ３．７匹）

我孫子武丸著。光文社。

篠崎凜―翠星学園高校一年生。中学から弓道を始め、現在弓道弐段。ひたすら弓道に打ち込む少女。そんな凛が師匠、棚橋先生の家で、ありえない矢で男が殺された事件に巻き込まれ、見事に解決した。『弓道名人は名探偵』と校内新聞で取り上げられ、凛の動画はいつの間にかネットで『天才弓道美少女』と評判になるが…。友達に悩み、自分に悩み、弓道に悩む青春真っ只中―。ひとりの少女の成長を活き活きと描く傑作長編。（紹介文引用）

 

探偵の素質がある弓道部員・篠崎凜を主人公にした弓道ミステリー。と言ってもミステリー要素があるのは前半のみで後半はほぼ弓道青春小説。

 

引退してしまった恩師・棚橋先生の自宅で起きた、弓を利用した殺人事件。１年生部員が突然退部を申し出た理由。OGから預かった高価な竹弓の盗難。新任の先生の影響で打ち方を変えてしまった部員たち。試合で凜の矢が不自然な切れ方をした。ライバル登場、テレビ密着。ミステリーと言えるのは竹弓盗難までかな。まあ専門用語の説明も丁寧にあり、なかなか面白かったかと。後半は凜をライバル視する他校のお嬢様を通じて、弓道とは何か、射品とか何かを自問自答する青春ドラマに。凜の撮影を担当する中田先輩との恋愛要素もチラリ。綺麗で正しいが何も心を打たない弓。凜のように射即人生を突き詰める弓。どちらが正しいかは分からないし、素人が見れば当たったか外れたかしか判断のできない深いところまで描いていて興味深かった。

 

ライバルの波多野（女優志望）が、棚橋先生や凜と出会ってあの頑なな性格が直ったのかどうか？は曖昧なまま。多分、何か初めて心を打つものがあったんじゃないかと予想できるが。そこをちゃんと読みたかったな。あと、中田って凜のタイプじゃないと思うんだけど…。なんか凜のほうが中田に夢中になりそうでモヤモヤする(笑)。ちょっとそのへん中途半端だったかな。でも最近読んだ我孫子作品の中では心動かされるところが多かったし、弓道の世界も面白く描かれていたと思う。