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ブート・バザールの少年探偵/Djinn Patrol on the Purple Line  (ねこ3.6匹)

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ディーパ・アーナパーラ著。坂本あおい訳。ハヤカワ文庫。

インドのスラムに住む、刑事ドラマ好きの九歳の少年ジャイ。ある日クラスメイトが行方不明になるが、学校の先生は深刻にとらえず警察は賄賂無しには捜査に乗り出さない。そこでジャイは友だちと共に探偵団を結成しバザールや地下鉄の駅を捜索することに。けれど、その後も続く失踪事件の裏で想像を遥かに超える現実が待っていることを、彼はまだ知らなかった。少年探偵の無垢な眼差しに映る、インド社会の闇を描いた傑作(裏表紙引用)
 
インドのジャーナリストによるデビュー作。エドガー賞ノミネートらしい。インドのスラム街に住む少年が探偵をする、というのに興味があって読んでみた。同時にインドの貧困層の事情などが分かればと。
 
スラスラと読みやすい(視点が9歳の少年なので)のは良かったが、翻訳者の苦労がしのばれる文章でもあった。注釈の多さ、言語でのルビ。。同じ意味でも家族によって言葉が違っていたり、(マー、アンミなど)ねえちゃん、にいちゃんなどの全部のページに出てくるような言葉にも必ずディディ、ダーイと振ってあるので読みづらくっていけない。
 
バザールの雰囲気やスラム街の暮らし、子どもたちの劣悪な環境、宗教の対立などがリアルに描かれていて良かった。水は朝しか出なかったりトイレは共同で有料だったり。そして、女の子だけが労働力として朝から晩までこき使われている状況に、主人公のジャイに対して「お前なんにもしてないじゃん!」と突っ込みたくなること多数。1日に180人の子どもが行方不明になるというインドの現実そのものなのだろう、謎は放置されたまま。ミステリーとして噛みごたえないこと甚だしいが、過酷な環境ながらも生き生きと暮らす子どもたちに焦点をあてた力作ではあると思う。