すべてが猫になる

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昨日がなければ明日もない  (ねこ4匹)

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宮部みゆき著。文春文庫。

若い主婦が自殺未遂をして音信不通となった。その裏で起きていた陰惨な事件とは?(絶対零度)。近所に住む主婦の依頼で出かけた結婚披露宴で、杉村は思わぬ事態に遭遇する(華燭)。ある奔放な女性が持ち込んできた、「子供の命がかかっている」問題とは?(表題作)。探偵vs.ちょっと困った女たちの事件簿。(裏表紙引用)
 
杉村シリーズ第5弾。(下の名前ないんだっけ?)三篇の中篇、短篇が収録されていて、どれもまあいつも通りアイタタタな人々が登場し、杉村を翻弄する。いつもにも増してすごいモンスターばかり出てくるのでかなりメンタルやられる。
 
裕福な家庭のご婦人が依頼にやってくる。結婚した娘が自殺未遂をし入院中だが、娘の夫から絶縁宣言に近いことを言われ、理由の見当もつかず娘にも会えず困っていると言うが…。
上下関係は絶対!の体育会系ホッケーチームリーダー。先輩の言うことは妻よりも絶対!の夫。宅飲み強制とか、奥さんや彼女を見下してホステス扱いとか、今が令和だと知っているのかおまえはジャングルから来たのか?と言いたくなるぐらい頭の弱い男性キャラが出てくる。結婚して、妻の弟に対し兄貴の言うことを聞けと威張り散らすって…。そんな人いる?こういう人種まだいるのかな。たまに事件になるからいるんだろうな。…と思っていたら、そういう問題ではないレベルの犯罪だった。こういう人種ってやはり普段の言動からおかしいんだな。普通の人間がちょっとした悪魔の囁きで…弱いのが人間だ…みたいな小説も多いが、これに関してはザマアミロとしか思わない。生まれてきてはいけない人間っていると思う。自殺した女性のその理由はもうだいたい見当がつくので、そうだったらヤだなあ…と思っていたらやはりその通りになった。こういう男を助長させる妻にも腹が立つ。
もしかして、依頼人になにか毒親的な要素あるとかいうオチなのかなあと期待したが…。
 
「華燭」
杉村が間借りしている事務所の管理人、竹中の友人・佐貴子の姪が結婚することになった。友人は家族と縁を切っているのだが、中二の娘・加奈がどうしても出席したいという。そこで竹中と杉村が加奈の保護役として結婚式に代理出席することになったが…。
同じ日の同じフロアでこんなすごいトラブル、、偶然のわけがない。佐貴子の妹が過去にやった所業は到底許せるものではないと思う。「水に流そう」って、被害者側の台詞だよね。この人たちは何も変わってないんだなあ。多少溜飲は下がったのかな?
 
「昨日がなければ明日もない」
竹中一号夫人と娘の有紗に相談を受けた杉村。有紗のクラスメイト、漣の横暴が目にあまるらしい。漣の弟は暴走車に惹かれ大怪我をし、それは別れた夫の家族による企みだと母親が騒いでいるというのだが…。
いやあ、読んでいてアホらしくなるぐらい凄いモンスター母出てきた…。学がない、常識がない、それで金銭にも男にもだらしないくせに権利だけは主張(権利ですらない)。さすがの優しい杉村も地味にキレちゃってます。。漣もイヤな子どもだったけど、親の犠牲者でもあるよね。こういう人間が身内にいたら人生諦めないといけないのかなあ…とげんなりする結末だった。タイトルの意味を考えたらもう…。
 
以上。
1話目と3話目に出てきたキャラが強烈すぎて、2話目の印象がまったくない。。
このシリーズは大好きなのだが、なにせ不愉快人間展覧会なもので…。読む手が止まらない面白さなのだが内容がキッツい。しかしやはり文章がとてもいい。宮部さんはベテランだが、今時の言葉や時勢をちゃんと盛り込んでいるので尊敬する作家のひとり。