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自殺予定日  (ねこ4匹)

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秋吉理香子著。創元推理文庫

「美しく強かな継母が父を殺した」再婚してわずか一年半足らずで父が急死。遺産とビジネスを受け継ぎ活躍する継母の姿にそう確信した女子高生の瑠璃。自らの死で継母の罪を告発しようと訪れた自殺の名所で“幽霊”の少年と出会い、ある約束をする。六日後―それが瑠璃の自殺予定日となった。瑠璃は父の無念を晴らせるのか?!すべての予想を裏切るノンストップ・ミステリ!(裏表紙引用)
 
秋吉さんの「暗黒女子」がなかなか良かったので、タイトルが気になるこちらにも挑戦。
 
主人公は高校生の瑠璃。レストランを経営する両親を持ち、自らも家事を得意として幸せに暮らしてきたが、母の死で状況は一変。父が再婚相手に選んだれい子に瑠璃も最初は懐いていたが、父の突然死はれい子による犯罪だったと確信。死をもってカリスマ・フードプロデューサーれい子を断罪しようと自殺の名所・佐賀美野村の森で自死を図るが失敗してしまう。その現場で出会ったのは、かつてそこで自殺を遂げたという少年・裕章の幽霊だった。瑠璃は裕章と共にれい子の犯罪の証拠を掴んでから自殺することを決意する。
 
主人公の瑠璃の思い込みの激しさが不自然なほどなので、れい子は瑠璃の思っているような人物ではないんだろうな、ということは読んでいれば分かる。反転させるだけならつまらない小説になっていただろうが、数々の伏線と意外な真相があって想像の域を超えてきた。イヤミスと見せかけて、瑠璃がたくさんのあたたかい人々と出会い成長する感動ストーリーだったことも意外だったと言える。こういうふうにホロリと涙する爽やかさは覚悟していなかったので、単純ながらも自分の胸に響いた。瑠璃が風水に頼りきっているところやそれで友だちを失くすところなど、決して好感の持てる女の子ではなかったのも逆に作用したのかな、って。
 
イヤミスを期待したらガッカリする作品かも。私はかなり好みかな。次もなにか読もう。