すべてが猫になる

ヤフーブログからお引越し。

まともな家の子供はいない  (ねこ3.8匹)

f:id:yukiaya1031jp:20210418222453j:plain

津村記久子著。筑摩書房

一週間以上ある長い盆休みはどう過ごせばいいのだろう…気分屋で無気力な父親、そして、おそらくほとんど何も考えずに、その父親のご機嫌取りに興じる母親と、周りに合わせることだけはうまい妹、その三者と一日じゅう一緒にいなければならない。…」14歳の目から見た不穏な日常、そこから浮かび上がる、大人たちと子供たちそれぞれの事情と心情が、おかしくも切ない。(紹介文引用)
 
津村さん2冊目。以前読んだ「ポトスライムの舟」がなかなか良かったので。
 
中学生のセキコは家にいつもいる父親が嫌で、学校や塾の時間以外は図書館や友だちの家で過ごしている。働かず、家ではいつもゲームをして言い訳ばかりの父親がいたらそりゃ多感な中学生には地獄だろう…。母親はそんな父親を好きだと言うし、妹はそこそこ両親とうまくやっているのもセキコのイライラに拍車をかけている感じ。紹介文に「おかしくも切ない」とあるが、ちっともおかしくなかった。もう胸苦しくて苦しくて、放り出したくなった。中学生にとって、自分の家でくつろげないことの鬱屈は嫌というほどわかる(自分のことではないが、10代のころの閉塞感や反抗心は人並みにあったと思うので)。セキコらが宿題をすべて写そうと奮闘する様を「おかしみ」として汲み取れれば良かったのだろうが、この親にして、、と思ってしまったことは否めない。セキコ以外のクラスメイトらの家庭もやはりまともではなくて、家庭環境がいい、って当たり前のようでいてありがたいことなんだなあとしみじみ痛感した。中学生のままならない心情や環境がとてもリアルで、津村さんの筆力をあらためて感じた。でもやっぱキツかったな。可哀想だよ。可哀想。セキコもナガヨシもいつみも、早く社会に羽ばたいて。