すべてが猫になる

ヤフーブログからお引越し。

かがみの孤城  (ねこ3.8匹)

f:id:yukiaya1031jp:20210418224752j:plainf:id:yukiaya1031jp:20210418224803j:plain

辻村深月著。ポプラ社文庫。

学校での居場所をなくし、閉じこもっていた“こころ”の目の前で、ある日突然部屋の鏡が光り始めた。 輝く鏡をくぐり抜けた先にあったのは、城のような不思議な建物。 そこには“こころ”を含め、似た境遇の7人が集められていた。 なぜこの7人が、なぜこの場所に―― すべてが明らかになるとき、驚きとともに大きな感動に包まれる。 生きづらさを感じているすべての人に贈る物語。 本屋大賞受賞ほか、圧倒的支持を受け堂々8冠のベストセラー。(上巻裏表紙引用)
 
話題になっていた辻村さんのジュブナイル小説
上下巻だけど、字が大きいし若向けなのでするするっと読めた。
 
主人公は、学校で理不尽なイジメに遭い不登校児となったこころ。ある日こころが自分の部屋にいると、突然鏡が光り始める。恐る恐る踏み入れた鏡の中には、ファンタジー映画で見たような孤城がそびえ立っていた。そして、そこにはこころと同じ境遇の同年代の少年少女たちが集められていて……。
 
こころが受けたイジメの酷さにムカムカしながら読んだ。担任もあてにならないし。説明しないのだからそりゃ分かるわけないのだが、こころのような繊細な少女が、大人にきちんと説明できない気持ちは分かる。この年代の子どもにとって、信頼できる大人かどうかというのは重要なことなのだ。母親やフリースクールの先生が心ある大人でまだ良かった。リアルの世界では、光る鏡も頼れる大人もいないのだと思うと、単純にこの物語を許容するばかりではいけないな、とも感じたがそれは野暮だしこの物語が多少なりともそういう子どもたちの支えになればと願う。
 
さて感動ストーリーに涙した、というだけのものではない。こころたちに仕掛けられたある大きな謎とその丁寧な伏線の数々がやはり読みどころで、ミステリ読みとしてはこちらのほうに評価の針が振った。全然気付かなかったもんね。カ〇ットのところでおや?とは思ったのだが。トリックそのものが人と人の絆に繋がるあたりさすが他の作家の追随を許さない辻村作品、といったところ。