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魔力の胎動  (ねこ3.7匹)

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東野圭吾著。角川文庫。

成績不振に苦しむスポーツ選手、 息子が植物状態になった水難事故から立ち直れない父親、 同性愛者への偏見に悩むミュージシャン。 彼等の悩みを知る鍼灸師・工藤ナユタの前に、 物理現象を予測する力を持つ不思議な娘・円華が現れる。 挫けかけた人々は彼女の力と助言によって光を取り戻せるか? 円華の献身に秘められた本当の目的と、切実な祈りとは。 規格外の衝撃ミステリ『ラプラスの魔女』とつながる、あたたかな希望と共感の物語。(裏表紙引用)
 
ラプラスの魔女」の前日譚。羽原博士の娘・円華が様々な悩める人々のところに登場し、その謎の力でそれぞれの問題を解決していく5編収録の短編集。
 
「あの風に向かって翔べ」
記録が伸び悩んでいるスキージャンパーの坂屋のところへ、風を予測できるという円華が現れた。最初は疑心暗鬼だった坂屋だが…。
風が大いに影響するスポーツってなんだか理不尽にも思える。自然現象だからみんな同じ条件じゃないしね。まあそれも含めての競技か。結局坂屋のメンタルの問題に落ち着いた。奥さんの愛良き。
 
「この手で魔球を」
引退間近のピッチャーとキャッチャー。後釜のキャッチャーがナックルボールをうまく捕球できない問題を円華が解決する。
これもほぼメンタル問題では。。結局は円華らが仕掛けた芝居のおかげなわけだけど。
 
「その流れの行方は」
鍼灸師のナユタの高校の恩師の息子が川に流され植物状態に。その息子を担当しているのは円華の父親で…。
溺れる人を助けるために、飛び込んではいけないというのはもう知れ渡っていることだけれど、飛び込む者に「自分が死んででも助けたい」という思いがあればどうなんだろう。。円華の実験には背筋が寒くなった。この母親すごいなあ。
 
「どの道で迷っていようとも」
盲目の天才作曲家・朝比奈の同性の恋人が死んだ。彼はカミングアウトによる偏見、差別に耐えられず自殺したのか?
自殺の真相を円華が解き明かすと同時に、ナユタの衝撃の過去も明らかに。当時の大人は罪深いとは思うけれど、いずれは覚醒していたのかもしれない。円華の真の目的にも驚き。
 
「魔力の胎動」
泰鵬大学教授の青江が、灰堀温泉村で起きたガス事故の調査に趣いた。立ち入り禁止区域内で死んでいた一家の謎に迫る。
これは唯一円華が登場しないお話。ラプラスと密接に繋がっている雰囲気はあるけど、あまり覚えていない。。
 
以上。
うん、まあ、普通。「ラプラス~」はそれほど気に入りの作品ではないのであまり期待はしていなかったけど、「どの道で~」や「その流れの~」など面白い作品もあった。ただ最初の2編がスポーツものだったのでかなり苦戦したし、円華の正しいけどキツイ物言いがちょっと堪えたなあ。どんな能力や経験値があろうと、10代は10代でしょ。まあ嫌いじゃないけど。うーん、このシリーズはもういいかなあ。(出たら読むが)