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家族パズル  (ねこ3.7匹)

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黒田研二著。講談社

父は亡くなる直前、雨降る病院の庭をなぜ靴を脱ぎ歩いたのか?(『はだしの親父』)。自殺志願の少年の命を救った優しいホームレスは殺人者だった!?(『神様の思惑』)。大金が必要となった青年は母を騙して、父の形見である絵画を狙うが(『タトウの伝言』)。リストラ中年と迷い犬の新生活は、奇妙な出来事ばかりの日々で(『我が家の序列』)。25年も男を苦しめた母の一言。しかし記憶を辿るとある違和感が(『言霊の亡霊』)。美しく、泣ける家族ミステリー。(紹介文引用)
 
くろけんの新刊は、家族をテーマにした連作短編集。うん、ここ最近の作品の中では一番良かったかな。
 
「はだしの親父」
三兄弟の父親が亡くなった。葬儀のため実家に集まった三人は、それぞれ父親の「はだし」の思い出を語り合う――。これは良かった!特に秋彦の金魚のエピソードは涙腺崩壊。いい親父さん。はだしで病院の中庭で死んでいた謎解き付き。
 
「神様の思惑」
息子2人と妻を連れて遊園地にやって来た男性は、迷子の世話をしていた清掃員に見覚えがあった。子どものころ、家の近くの公園に住んでいたホームレスの「カミさん」との再会に喜んだが――。2人の子どもを殺したのはカミさんなのかどうか、っていうミステリー要素もあり。カミさんいい人すぎる。。けど、〇殺だったのなら親がカミさんのせいにしたところで救われないよね。
 
「タトウの伝言」
画家の夢を断念した孝介は、応募した高額の仕事に採用された。しかし面接に行くと、その仕事の内容は明らかに振り込め詐欺。断ると300万の違約金を請求されたが……。いやいや、反社のそんな契約書無効じゃないのかい。。孝介にイライラしつつ、薄情だと思っていた母親の真の心に感動。
 
「我が家の序列」
会社をリストラされた俊輔だが、家族にはそれを言えないでいた。悩みを抱える中、俊輔につきまとって来た不思議な犬を飼うことになったが――。いやいや、それ10年気づかんってどんだけ家族に興味ないねん。。こういう父親って、いくら反省しようとなかなか受け入れてもらえるもんじゃないけどね。まあフィクションということで。あと、口臭(喫煙者)、肥満、仏頂面の中年男を雇う大手電機メーカーなんてないと思う。。
 
「言霊の亡霊」
幼少期から、病弱な妹ばかり可愛がる母親に愛情を注いでもらえなかったと信じる男。25年後結婚し娘をもうけたがうまくいかず……。親が子どもに与える影響は計り知れないのだなと思うお話。ちょっとした掛け違いなんだよね。
 
以上。
どれもハートフルで、感動系。ミステリー要素もあるのでどちらのくろけんファンでも楽しめそう。ちょっとご都合主義というかツッコミどころも多いが、読みやすいしテーマがテーマだけに万人にどれかは刺さりそう。もうちょっと、ちゃんと話せばいいのになあ、と思う家族ばかりだった。家族が生きているなら、言うべきことは言葉にしておいた方がいいと思える1冊。