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たかが殺人じゃないか 昭和24年の推理小説  (ねこ3.5匹)

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辻真先著。東京創元社

昭和二四年、ミステリ作家を目指しているカツ丼こと風早勝利は、名古屋市内の新制高校三年生になった。旧制中学卒業後の、たった一年だけの男女共学の高校生活。そんな中、顧問の勧めで勝利たち推理小説研究会は、映画研究会と合同で一泊旅行を計画する。顧問と男女生徒五名で湯谷温泉へ、修学旅行代わりの小旅行だった―。そこで巻き込まれた密室殺人事件。さらに夏休み最終日の夜、キティ台風が襲来する中で起きた廃墟での首切り殺人事件!二つの不可解な事件に遭遇した勝利たちは果たして…。著者自らが経験した戦後日本の混乱期と、青春の日々をみずみずしく描き出す。(紹介文引用)
 
実は初・辻さん(多分)。ランキング三冠ということで。
戦後の日本を描いている、というのと作者が88歳ということで多少腰が引けていたところもあるにはある。そういう意味では想像通りの作品だったなと。
 
舞台は昭和24年の日本。第二次世界大戦後の学制改革や人々の生活などを17歳の少年・勝利の視点を通じて描かれる。鉄道や衣食住の事情など、こちらが求めている以上に脱線してくるためテンポはよろしくない。なかなか事件も起こらず、性的エピソードが多く、退屈+嫌悪感少々。事件そのものも唐突で、彼らの学生生活とリンクしないので(関係者という意味ではそうなのだが)あまり興味も持てず。。古臭いニックネームが全員についているのにも女性にいちいちデコピンするキャラクターがいるのにも読みづらさに拍車をかけた。
 
ニックネームも性的エピソードも戦後の描写も、実際にその時代を生きた作者が描くリアリティ、ロマンと捉えるかどうかが好みの分かれ目かと思う。単体で考えると生首のトリックは意外で面白みがあったし、ラスト数行もひねりが効いていてキレがいい。好きな人は好きだと思う。でも私には合わなかったすいません。