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ビブリア古書堂の事件手帖Ⅱ ~扉子と空白の時~  (ねこ3.8匹)

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三上延著。メディアワークス文庫

ビブリア古書堂に舞い込んだ新たな相談事。それは、この世に存在していないはずの本―横溝正史の幻の作品が何者かに盗まれたという奇妙なものだった。どこか様子がおかしい女店主と訪れたのは、元華族に連なる旧家の邸宅。老いた女主の死をきっかけに忽然と消えた古書。その謎に迫るうち、半世紀以上絡み合う一家の因縁が浮かび上がる。深まる疑念と迷宮入りする事件。ほどけなかった糸は、長い時を超え、やがて事の真相を紡ぎ始める―。(裏表紙引用)
 
ビブリア古書堂シリーズ、シーズン2第2弾。栞子さんと五浦さんの娘、扉子ちゃんはもう高校生になっていてビックリだよ。。いつでもどこでも本を手放さない子、って好感度は高いけど、栞子さんのクローンみたいだなー、もう少し栞子さんとの明確な違いみたいなものは欲しいかな。もう少し成長したら出てくるのかもしれないけど。
 
で、本書ではついに横溝正史モノ登場。しかも、3話すべて横溝正史モノというファンには贅沢な1冊。もちろん私も横溝正史は大好きで映像もかなり観ているしほぼ作品は読破しているのだが、どちらかといえば乱歩派。まあしかし色々知らない横溝の小ネタが知れてそれだけで楽しかった。
 
第一話と第三話は、単行本になっていなかった家庭小説「雪割草」が見つかったというニュースをそのままネタにしているのでリアル。ファンなら生原稿とかよだれものだろうね。盗んで手に入れて何が嬉しいのか、それだけが分からんが。。「雪割草」盗難事件にまつわる登場人物は双子姉妹とか色々と横溝ワールドを彷彿とさせる設定を盛り込んでいてクスリとなるかも。ミステリー要素よりも横溝ネタを楽しむお話だったな。
 
第二話の「獄門島」は扉子が小学生の時のお話で、ストーリー自体はこれが一番かも。扉子が「獄門島」で読書感想文を書く、ということで学校の担任は大慌て(こういう先生が子どもから自主性や感受性を奪うのだよ)。私が小学生の頃って怖い本が大人気で、クラスで取り合いになってたけどなあ。ちなみに私は親の持っていた金田一耕助シリーズをこっそり読んでいた。。(西村寿行に手を出そうとしたらさすがに「あんたには早い!」と怒られたが。)扉子の取り置きした「獄門島」が、他の客に買われてしまったというトラブル。これは誰にも悪意がなくって好きだな。扉子にいいお友だちも出来たし良かった良かった。このお話のラストは、扉子も嬉しいんじゃないかなあ。。
 
 
前にも書いたが横溝正史というだけで楽しめる1冊。しかし、本好き、本マニアなのに犯罪者レベルの悪人がちょこちょこ登場するのは胸が痛い。このシリーズの特色でもあるのだけどね。そのためにそこまでするかなあ、本好きに悪人がいっぱいいるみたいなイメージやめてほしいなあ、という気持ちと、悪人になってしまうほど本に魅せられてしまう人間ばかり出るからこそこのシリーズなんだよなあ、という葛藤が入り混じる。。
次の扉子は何歳になってるんだろう?