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赤髯王の呪い/La Malediction de Barberousse  (ねこ3.7匹)

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ポール・アルテ著。平岡敦訳。ハヤカワ・ポケット・ミステリ。 

1948年ロンドン。エチエンヌは故郷アルザス在住の兄から届いた手紙に驚愕する。ある晩、兄が密室状態の物置小屋の中を窓から覗いてみると、16年前“赤髯王ごっこ”をしたために呪いで刺殺されたドイツ人の少女エヴァの姿があったというのだ。エチエンヌは友人から紹介された犯罪学者ツイスト博士に、当時の状況を語り始めるが…。『第四の扉』刊行以前に私家版として発表された幻のツイスト博士シリーズ第1作。アルザス=ロレーヌ作家協会賞受賞作。ほかに、短篇「死者は真夜中に踊る」「ローレライの呼び声」「コニャック殺人事件」収録。(裏表紙引用)
 
 
ブロ友さんにいただいた本。ポール・アルテを読むのは3冊目かな?「フランスのディクスン・カー」と称されるにふさわしいツイスト博士シリーズ第1作だそう。表題作が長編で、ほかに3作の短編が収録。どれもツイスト博士もの。
 
「赤髯王の呪い」
 アグノー出身の料理人エチエンヌは、赤髯王の呪いに再び怯えていた。16年前の夏休みに殺害された少女が、故郷の父の前に現れたというのだ。さらにエチエンヌの目の前にも少女の亡霊が現れ…。割と歴史もの的要素が濃いのでそのあたり読むのに苦戦したが、父親の死のトリックや過去の事件の意外な真相など、分かりやすくて面白い。今読むには古臭いところもあるし博士の推理も「見て(聞いて)気付いた」といったものが多くガクっとならなくもないが…。天才型なのかも。話がコロコロ飛ぶので読みづらいところもあるが、悲恋の物語としても青春ものとしても読ませる。
 
「死者は真夜中に躍る」
デボンシャー州の片田舎でエンジントラブルに見舞われた博士は近くの屋敷に避難した。そこで聞かされた呪われた過去とは…。150年前の呪いというのが年季入ってていい感じ。棺のトリックはなるほど。絵に描いたような悲劇だが、そのために身内も手にかけるのか…。戦争の傷跡はここにもある。
 
ローレライの呼び声」
商店主のハンスが怯えるローレライの声と金髪女性とは。婚約パーティの夜に溺死したハンスは自殺なのか?おかしなドイツ語と孔雀の羽根で全貌を明らかにする博士、神。
 
「コニャック殺人事件」
小さな集落の古い屋敷に滞在中の博士のもとを訪ねたハースト警部。現在抱えている元ぶどう農園主の殺害事件をツイスト博士が暴く。犯罪の魔術師とか色々雰囲気あっていいなあ。ミスリードもうまいし、毒殺した方法が陰湿でゾっとする。悪魔だね。
 
 
以上。
「赤髯王~」はまだこなれていない印象。正直言うと「コニャック~」が一番好きだった。戦争の歴史や背景を知っているほうが理解できるだろうな、というお話が多かった。どれも密室殺人ものでおどろおどろしい雰囲気もしっかりあるのでカーファンなら読んで損はないかと。(世界観の確立という部分ではカーほどではないが、アルテのほうが読みやすい)