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むらさきのスカートの女  (ねこ3.7匹)

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今村夏子著。朝日新聞出版。

近所に住む「むらさきのスカートの女」と呼ばれる女性のことが、気になって仕方のない“わたし”は、彼女と「ともだち」になるために、自分と同じ職場で彼女が働きだすよう誘導する。『あひる』、『星の子』が芥川賞候補となった話題の著者による待望の新作中篇。(紹介文引用)
 
第161回芥川賞作品。受賞した時は予約がすごかったので諦めていたのだが、今申し込んだら秒で廻ってきた。あまり芥川賞には普段興味がないのだがこの作品は気になったので。ちなみに初・今村さん。
 
えー、およそ150ページほどの小説なので2時間もかからずに読める。文章もクドさはなく淡白なので読みやすい。出てくる主要人物は、不潔な容姿と行動で街中の有名人となっている「むらさきのスカートの女」と、むらさきのスカートの女と友だちになりたいがためにストーカーをしている自称「黄色いカーディガンの女」。むらさきのスカートの女のことは必ず「むらさきのスカートの女」と称されていて、「彼女は」「日野さんは(本名)」と書かれることはない。それがクドさよりも独特の雰囲気を放っていて良かった。何より、最初はむらさきのスカートの女の不気味さが強調されているに関わらず、早い段階から語り手の黄色いカーディガンの女のほうが異常であることが分かる。毎日後をつけむらさきのスカートの女の動向を把握しているのもそうだし、自分と同じ仕事につかせるために求人情報誌に〇をつけてむらさきのスカートの女のそばに置いたり、無銭飲食をしたり、とにかく何もかもがおかしい。
 
職場での不倫行為により嫌われ者になってしまったむらさきのスカートの女が一体どういう運命をたどるのか、黄色いカーディガンの女は最終的にむらさきのスカートの女とどうなるのか。それだけが気になって読みすすめたが、割とあっさりとした結末。いつのまにか主と従が入れ替わってしまった、そういうことなのだろうが…どちらも哀れだ。
 
なかなかの手腕とみた。他の作品も読んでみたい。ところで表紙はなぜ白黒の水玉スカートなのだろうか??