すべてが猫になる

ヤフーブログからお引越し。

ミステリークロック/コロッサスの鉤爪  (ねこ3.8匹)

f:id:yukiaya1031jp:20201229124013j:plainf:id:yukiaya1031jp:20201229124126j:plain

貴志祐介著。角川文庫。

人里離れた山荘での晩餐会。招待客たちが超高級時計を巡る奇妙なゲームに興じる最中、山荘の主、森怜子が書斎で変死を遂げた。それをきっかけに開幕したのは命を賭けた推理ゲーム!巻き込まれた防犯コンサルタント(本職は泥棒!?)の榎本と弁護士の純子は、時間の壁に守られた完全密室の謎に挑むが…(「ミステリークロック」)。表題作ほか計2編収録。『コロッサスの鉤爪』と2冊で贈る、防犯探偵・榎本シリーズ第4弾。(裏表紙引用)
 
榎本シリーズ第4弾。単行本「ミステリークロック」を2分冊したようなので、記事はまとめて。
 
「ゆるやかな自殺」
組のナンバーツーと弟分を射殺した組員の野々垣。双方とも自殺したかのように見えた。野々垣が施したトリックとは。榎本さんがヤクザの脅しにビビりながらもトリックを暴いて行くのがなんだかおかしみ。彼らとの関係性や性格が重要になっている。拳銃のトリックは確実性はないながらもうまいこと考えるなあと感心。でも陰湿だよね、確かに。ラストがコワイ。。こりゃ榎本さん逃げて正解。
 
「ミステリークロック」
大御所女流ミステリー作家の山荘に防犯コンサルタントとして呼ばれた榎本。果たして精緻なトリックを見破ることが出来るか!?
犯人当ての要素はほぼなく、完全なる心理&物理トリックもの。しかも複数の時計と時間のロジックの応酬、まったくワケが分からない。。複雑すぎる!図解付けてよ!と思っていたら図解があった。う、うーん、まあなんとか「こういうことをしたんだな」という結果だけは分かったけれど、説明しろと言われたら絶対無理。感想見回ったらほぼ皆さん「複雑すぎて分かりにくい」と書いてあったので胸をなで下ろした。容疑者の一人が銃で脅しながら私設法廷を開いたり、撮影があったり、青砥さんのとんちんかん推理があったりとストーリー的な楽しみは結構ある。これは映像向きだなあ。。まあ、小説の存在意義否定してるみたいだけど。
 
「鏡の国の殺人」
榎本が深夜に侵入した美術館の館長室で、館長が撲殺された。現場は密室で、榎本以外が犯人ではありえない状況だったが…。「鏡の中の迷宮」、入ってみたいなあ。榎本さんが犯人のわけはないので青砥さんが現場で推理(とんちんかんな)がんばるのだけど、ここにルイス・キャロル専門家の「ちぇしゃねこう(変換めんどくさい)」が登場したからますますおかしな事態に…。ほぼコメディ。このトリックも専門的すぎるのと視覚での確認ができないから理解があまりできない。ああ、そういう原理のものがあるのでそうやったらそうなるのか、ということが分かればいいのかな。しかしこの犯人の動機が意味不明。許せないことをしている人を怒れるのに自分はそれ以上の犯罪を犯すって。。
 
「コロッサスの鉤爪」
飽和潜水のダイバーが海中で死亡した。現場は「音の密室」で殺人は不可能に見えたが…。榎本さん、サメにも詳しいのか…。専門的な部分も多いが割と興味深い世界だったのでこれは楽しめた。トリックは、そういうの使うのは反則ではと思わなくもないが(ミステリーのトリックとして)そういうものがあるのか、という勉強にはなった。悲鳴や泡の謎、聴音など普通のミステリーでは出会えないような状況ばかりで完成度は高いかと。読み物としても一番面白かったかな。楽しんで会話を描いているのが分かる。
 
以上。
榎本さんの裏仕事が泥棒だって忘れてたので実は結構ドン引きながら読んでいた。いや、面白いキャラ設定だけど。最初はイライラするなーと思っていた青砥さんのトンチキ推理キャラも慣れてくるとほとんどギャグで面白くなってきたし。本格好きの私をもってしても難解なのがちょっとキツイがやっぱりいいシリーズだなと再確認。