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七つの時計/The Seven Dials Mystery  (ねこ3.8匹)

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ロンドン郊外のチムニーズ館に宿泊していた若い外交官が、睡眠薬を飲んで変死した。死体の枕もとには七つの目ざまし時計が…この事件と、謎めいた“セブン・ダイヤルズ・クラブ”の関連は?謎は謎を呼び、推理と冒険が入り乱れ、事件は思わぬ展開を!『チムニーズ館の秘密』に続く、波瀾万丈の冒険ミステリ。(裏表紙引用)
 
「チムニーズ館の秘密」の続編だが、登場人物はじめストーリーに関連はないので未読でも特に問題はないと思う。
 
舞台はかのチムニーズ館。滞在中の若者たちが、寝坊ばかりしている外交官ジェリーに対して「八つの目覚まし時計」を枕元に仕掛ける。だが翌朝、ジェリーは睡眠薬の飲みすぎにより死亡、枕元の時計も一つ窓の外に投げ捨てられていた。やがていたずら仲間のロニーが「セブン・ダイヤルズに伝えて」と言い残し射殺体となって伯爵令嬢バンドルに発見されるが…。
 
出だしこそポアロやマープルもののような雰囲気で始まるが、実際はクリスティお得意の冒険ミステリー。伯爵令嬢バンドルと若い外交官たちが力を合わせてセブン・ダイヤルズという謎の組織に立ち向かう。ドイツ人の発明した恐ろしいものとは?彼らの正体は?バンドルが秘密の部屋の扉に何時間も閉じこもったり、盗賊?に襲われたりとスリル満点。姿を見せない「ナンバー7」の正体には本当に驚かされたし、組織を狙う人物の正体も誰も予想がつかないのでは。登場人物が多いので混乱するが、一つ一つの大きな企みがある人物によって明かされていく展開が痛快。バンドルのロマンスにも比重が置かれているので女性読者はさらに楽しめるかな。
 
これも大昔一度読んだきりなので記憶がなかった小説ではあるが(しかも、コレクションのかなり後半で読んだと思う)、「おもむきのある」が口癖のソックス嬢やバトル警視の名前だけはなんとなく覚えていたな。。忘れていたのが不思議なほど印象に残る個性的な作品だったと思う。多分「チムニーズ~」より上だな。