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放課後スプリング・トレイン  (ねこ3.5匹)

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吉野泉著。創元推理文庫

四月のある日、私は親友から年上の彼氏を紹介され、同席していた大学院生の飛木さんと知り合う。彼は、天神に向かう電車で出会った婦人の奇妙な行動や、高校の文化祭でのシンデレラのドレス消失騒動など、私の周りで起こる事件をさらりと解き明かしてみせる不思議な人だった。「飛木さん、どうしたら謎が解けるようになりますか?」福岡を舞台に贈る、透明感溢れる青春ミステリ。
 
16年に文庫で発売されたデビュー作。福岡を舞台にした青春ミステリ、初読みの作家さん。
 
普通の女子高生、吉野と親友の朝名が繰り広げる日常ミステリー。ある日吉野は朝名の彼氏(上原)とその友人・飛木を紹介され、飛木の頭脳明晰さや大人びた存在感に激しく影響を受ける。私も彼のように物事を見られるようになれたら…。というお話。
 
「放課後スプリング・トレイン」は、電車で吉野が隣に座ったおばさんにスカートを踏まれ、降車時も目が合っているのに睨まれるだけで全然どいてくれない…なぜ…というお話。「学祭ブロードウェイ」は文化祭で英語劇を発表することになった吉野のクラスだが、上演間際にヒロインのドレスが盗まれてしまった、というお話。(本人から発する臭いで分かるだろう普通)「折る紙募る紙」はボランティアの募金活動中にリーダーの二人が一日行方をくらませたお話。(心のこもっていない鶴はアリなのか?)「カンタロープ」は、上原の受け持ちの男児が育てていた花の種類が変わってしまうお話。(メインよりも作品全体の仕掛けに驚ける)
 
小学校の教師が女子高生と交際している時点でビックリなのだが…。人柄がいいからアリ、とこの作品ではそういうことになっているらしい。福岡が舞台という特徴がありながら全員標準語なのも意味不明というか…。4作品どれもが、席替えや文化祭、演劇など学生時代の郷愁を誘うもので、その1つ1つのエピソードはなかなか面白いのだが…。残念ながら、前半のエピソードと後半のミステリ部分がまったく噛み合っていなかった。その真相も「そうじゃない!」とガックリするものが続き読む意欲を何度も無くした。。文章や会話にはとてもセンスを感じるし、創元社らしい個性と高校生の繊細な心理描写には長けているが、あと1つ何かが足りない感じ。探偵役の飛木と吉野にあまり魅力がなかったのも原因かな。親友の朝名やその彼氏、クラスメイトのイッセーなんかのほうがよっぽど輝いていたと思う。
 
ということで自分には合わなかったのだが、世間一般の評価を見ると好意的なものばかりなのであまり参考にされませんよう。