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カーテンコール!  (ねこ3.8匹)

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加納朋子著。新潮文庫

閉校が決まった私立萌木女学園。単位不足の生徒たちをなんとか卒業させるべく、半年間の特別補講合宿が始まった。集まったのは、コミュ障、寝坊魔、腐女子、食いしん坊……と個性豊かな“落ちこぼれ” たち。寝食を共にする寮生活の中で、彼女たちが抱えていたコンプレックスや、学業不振に陥った意外な原因が明らかになっていく。生きるのに不器用な女の子たちの成長に励まされる青春連作短編集。(裏表紙引用)
 
加納さんの文庫新刊。
 
経営不振により閉校が決まった萌木女学園。それぞれの事情で単位が足らず中退を余儀なくされた少女たちを集めて、特別補講合宿という名の別名「女の刑務所」合宿を行うが集まった少女たちは皆曲者ぞろいで。。。
 
「砂糖壺は空っぽ」
ある特性を持った主人公、桃花。中学生の時、塾で出会った義足の少女に恋をした。…が、あっけなく玉砕。時は流れ、萌木女学園の理事長室で知った真実とは。この特性、今でこそ知れ渡ってはいるけれど、現実としてはまだまだマイノリティなんだと思う。特に恋は難しいよね。
 
「萌木の山の眠り姫」
朝に極端に弱い朝子は、寝坊が過ぎて補講が決定した。同室となった夕美も眠ることが多く、時には意識を失ってしまうほど。心配した朝子だが…。この病気は聞いたことがあるので、最初からソレなんだろうな、と見当はついた。夕美のほうはともかく、朝子はこれではとても社会人としてやっていけないだろう。仕方ない、ではなく治そうとする努力を理事長から学び、夕美からは強さを学んだ。女の友情は儚いというけれど、自分たちだけの共通点が見つかった時の女の結束力は最強だと思う。
 
「永遠のピエタ
百合小説を描くのが趣味の真実は、隣室の夕美と朝子の仲の良さに目をつけ1人萌えていた。このヒロインが一番親近感がわくというか、実際にこういう子いたなあ、というイメージ。昔ほどこういう子って変人扱いされてないと思うんだよね。サブカル女子なんて言葉、昔はなかったし。まあ真実の場合は萌えだけど、アニメやBLを女子や大人が好きって堂々と言えるいい時代になったなと思う。真実の場合は、その仲間を作れないところがネックなんだろうな。同じ趣味の仲間ほど生きる糧になるものはないよ。
 
「鏡のジェミニ
千帆と同室になった茉莉子は酷い拒食症だった。なんとか茉莉子に食事をして太ってもらいたいと理事長に直談判する千帆だが意外な展開となり。。。作品中一番面白かったのがコレかな。千帆、茉莉子、2人の視点が交代することにより「自分のことだけは見えない」怖さが引き立ってた。しかし、千帆のような人が自分の…に自覚がないって有り得ないと思うんだけど。これこそ洗脳みたいなものなのかな。
 
プリマドンナの休日」
性格も頭も完璧な少女・菜々子と同室になった夏鈴だが、菜々子が時々どこかへ姿をくらますことが気になって仕方ない。ある日こっそり夏鈴に会いに来た彼氏が連れていた男がとんでもない秘密を暴き出す。。ちょっとコレはキツい内容。彼氏腹立つし夏鈴もちょっとなー、と最初イラっとしていたが、一番キツいのは菜々子だった。。いやあ、ホラーだわ。これで終わっちゃうんだ。。大丈夫かな、それやったら人生終わるまで逃げられないけど。。夏鈴は作品中一番パッとしないキャラだったかな。
 
「ワンダフル・フラワーズ」
いよいよの卒業式。理事長の過去がついに語られる・・・って、そういう話だったのか。。死にたがりの少女玲奈の境遇もかなり気の毒だけれど、理事長にそんな悲しい過去があったなんて。。昔の女性って大なり小なりみんなこういう思いをしてきてるんじゃないだろうか。。とは思うけれど、いくらなんでも鬼畜すぎるというか。今でもないとは言わないけどね。対象が変わっただけで。
 
以上。
すべてのことがうまくいくわけではないし、何の解決にもなっていないケースのほうが多い。けれど、前より少しだけ良くなっている。それがリアルにいいと思う。少し良くなる、っていうのが一番大変だと思うので。脇役だと思っていた理事長が実は隠れ主役だったのかも。すごくいい学校なので、卒業したくないっていうの分かるなあ。