すべてが猫になる

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棲月 隠蔽捜査7  (ねこ3.9匹)

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今野敏著。新潮文庫

鉄道のシステムがダウン。都市銀行も同様の状況に陥る。社会インフラを揺るがす事態に事件の影を感じた竜崎は、独断で署員を動かした。続いて、非行少年の暴行殺害事件が発生する。二件の解決のために指揮を執る中、同期の伊丹刑事部長から自身の異動の噂があると聞いた彼の心は揺れ動く。見え隠れする謎めいた“敵”。組織内部の軋轢。警視庁第二方面大森署署長、竜崎伸也、最後の事件。(裏表紙引用)
 
竜崎シリーズ第9弾。禊を済ませた竜崎の大森署での最後の事件。どこにいても階級は何でも相変わらず筋を通しブレない竜崎に、管轄にこだわる警察の皆さんがメロメロになる回(笑)。偉いさんが来ても誰からの電話でも書類の判押しをやめない竜崎。伊丹本部長にタメ口の竜崎。周りはハラハラ、といういつものパターン。これ竜崎がやるからいいんだよね。やることと能力が噛み合ってない人がやってもただのイタイ大人だから。なんだかんだ、警視庁と大森署の協同捜査になっちゃうし。戸高が竜崎をかばう発言をした時には目を疑ったね!
 
事件は今回特にイマイチではあるのだが…少年犯罪、サイバー犯罪って結構掘り下げたら深くなると思うのだけど、このシリーズではそのへんあっさりすんなり。あまり問題提起に対する出口は提示されない。だけど「悪事の勢力が常に一定量あるという発言を警察官がしてはいけない」という竜崎の言葉は響くなあ。悪はなくならない、そんな簡単なことじゃないけれど、悪があるという前提の未来を思い描いて仕事をしてはいけない、まして警察官ならば。ということかな。
 
そしていつも以上にカッコイイ妻の冴子さん。「すみやかに解決しなさい」はまいった。。それに引き換え息子邦彦は今度はポーランド留学だってよ。。こいつはまた色々と…まあがんばって。
 
さて意外なところへ異動が決まった竜崎。最後の舞台を見送った仲間たちとの別れのシーンは感動的。竜崎は冷めてるけど。大森署で感情というものを少し学んだ竜崎、さて次の現場ではどう成長するかな。