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ザ・チェーン 連鎖誘拐/The Chain  (ねこ4匹)

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エイドリアン・マッキンティ著。鈴木恵訳。ハヤカワ文庫。

シングル・マザーのレイチェルの娘が誘拐された。犯人の要求は身代金の送金と他人の子供を誘拐することだった。犯人もまた息子を誘拐され、人質にとられているのだ。何者かが仕組んだこの連鎖誘拐システム“チェーン”は首謀者にたどり着くことはできず、また逃れることもできない―レイチェルは娘を救うために、やむなく被害者から加害者へと転じることになるが…圧倒的にスピーディーな展開で描かれる大作スリラー。(上巻裏表紙引用)
 
話題の海外ミステリー、早速読んでみた。知らない作家さんだったのだけど、帯に連ねてる推薦者の名前が凄いね。キング、ウィンズロウ、長岡弘樹、伊岡瞬、芹沢央などなどなど。
 
で、内容。主人公はシングルマザーのレイチェル。一人娘のカイリーと二人暮らしだったが、スクールバスで帰る途中だったカイリーを男女二人組に誘拐されてしまう。カイリーを取り戻すには、大量の使い捨て携帯と拳銃を購入し、ビットコインで身代金を送金、さらにレイチェルが別の子どもを誘拐、監禁し、その親が身代金を払い次の子どもを誘拐しなければいけないという恐るべき<連鎖誘拐>だった。。。
 
プロット1本で突き進む上巻がスピーディーかつスリリングでいい。娘を誘拐された善良な母親が別の子どもを誘拐し、殺人も辞さない状況にまで追い込まれる。電話やPCは盗聴されており、少しでも怪しい動きをしたら<チェーン>にかつて巻き込まれていた人間たちがどこからか現れ、脅迫してくるっていう。。しかもレイチェルが誘拐した子はピーナツアレルギーだし、監禁されたカイリーはレンチを見つけて自力で逃げようとするし。しかもレイチェルは離婚と乳がん治療で疲弊しており、パートナーに引き入れた義兄は薬物中毒。これで事がうまく運ぶはずはない、っていう立場なのだけど、うまくいっちゃうんだこれが。
 
で、下巻。一通り仕事をこなしたレイチェルが、<チェーン>を壊滅させようと奮闘する。まあそりゃそうだ。いくらうまくいったとしても、一生<チェーン>の影に怯えなければいけないわけで。上巻と比べたらちょっと勢いが…。というのも、描写されていく<チェーン>側の生い立ちや人物像、犯行動機がどうもステロタイプすぎて萎えてしまったというか。。<チェーン>の正体も、ほとんどの読者が「こいつだな」と予想するだろう通りの人物そのまんまだったし。最後の最後がアクション映画ばりに盛り上がって良かったけど、これほどの大犯罪に対して、え、それだけ?という印象。
 
上下巻ものだけど薄いしめちゃくちゃ読みやすいので、ハラハラする面白さだけを求める分にはいいと思う。退屈はしなかったけど、自分にはちょっと浅くて物足りなかったかな。。