すべてが猫になる

ヤフーブログからお引越し。

マインド・クァンチャ  (ねこ4匹)

f:id:yukiaya1031jp:20200801101418j:plain

森博嗣著。中公文庫。

その美しい速さ、比類なき鋭さ。こんな剣がこの世にあったのか―。突如現れた謎の刺客。ゼンは己の最期さえ覚悟しつつ、最強の敵と相対する。至高の剣を求め続けた若き侍が、旅の末に見出した景色とは?(裏表紙引用)
 
ヴォイド・シェイパシリーズ第5弾、堂々の完結。
 
いや~~もう良かった~~~一番理想的な形で終わった~~。
冒頭でゼンが赤い面の男に殺されかけて、意識が戻ったら記憶を失っているという展開。知らない少年ケジロと、姉のマサイとの暮らし。謎の仙人。自分が誰かも分からないまま、だけど結構うまくやってるじゃん?という雰囲気なので、ゼンですら「都へ下りる必要はあるのか?」と自問自答する。仙人が教えてくれた、「失ったために得るもの」…。自分が何者か、という問いに己の身一つだと悟ったゼン。今まで敵わなかった敵に勝つことができたのは、何も考えなかったから、そこに自分がいなかったから。やっと到達できたのかな。
 
それは喜ばしいけれど、最後のゼンの宿命には読んでいて戸惑った。いいことなんだろうけど…天下を取るよりも大事なことがあって、それをようやく思い出したかのようなラストは本当に感動的。良かった良かった。あれからどうなるのかな。立場上、そう簡単には逃げられないだろうし、ゼンの力でノギさん迎え入れることになるのかなあ。それは甘いかな。でもそうなるといいな。いやあ、人間の生き様を考えさせられる良いシリーズだった。