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赤い博物館  (ねこ3.7匹)

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大山誠一郎著。文春文庫。

警視庁付属犯罪資料館、通称「赤い博物館」の館長・緋色冴子はコミュニケーション能力は皆無だが、ずば抜けた推理力を持つ美女。そんな冴子の手足となって捜査を行うのは、部下の寺田聡。過去の事件の遺留品や資料を元に、難事件に挑む二人が立ち向かった先は―。予測不能なトリック駆使、著者渾身の最高傑作!(裏表紙引用)
 
大山さん3冊まとめて仕入れたのでこれで最後。「赤い博物館」と呼ばれる警視庁付属犯罪資料館を舞台に、色白黒髪クールビューティー館長緋色冴子とヘマをして捜査一課から異動させられた寺田聡巡査部長が過去の未解決事件を解決していく5編の連作短篇集。
 
「パンの身代金」
1998年に発生した、中島製パン株式会社恐喝・社長殺害事件。抜け道や残された1億円、社長が殺害された理由など、全ての謎が合理的に緋色冴子さんによって明らかになっていく。これは見事なトリック。人間それぞれの目論見が見えたら行動も見えるんだなあ。ただ、あの人たちの過去の行動…彼らみたいな立場の人間がそんなことするかね…?ラストでキレたあの人物も言ってることよくわからんし。アナタ警察官でしょ。。
 
「復讐日記」
青年のもと恋人がマンションから何者かに突き落とされて死亡した。もと恋人は妊娠しており、愛人関係にあった人物が怪しいとみた男は復讐のための殺害を計画する。実行後の日記が窃盗犯により警察に届けられ犯行が明るみに出たが、青年は事故で死亡しており…。信頼できない語り手の系統。目まぐるしく変わる真相。うーん、犯罪だけれどこれが真の愛っていうものなのかな。やりきれない。
 
「死が共犯者を別つまで」
交換殺人もの。一生縁が切れないという意味でも、割に合わない犯罪だと思うけどね。と思わせる話だった。交換殺人のパートナーが誰か?というところから、犯行時アリバイが確かで動機がある者という探し方の常道が冴子さんの推理により全部覆るのが面白いところ。ちょっと頭こんがらがった。
 
「炎」
放火・青酸カリ一家殺害事件の生き残りとなった小さな娘。飲み物に青酸カリを入れる殺害方法って、複数だと難しいんじゃないかと常々思うんだけどどうなんだろう?遅効性ならともかく。みんな一斉にゴックンしないと無理だよね。それはともかく、母親や叔母が隠していた秘密には驚いた。しかし、二度目にコレはないでしょ。さすがにこんな状況有り得ないと思うんだけど。舐められ過ぎ。。
 
「死に至る問い」
27年前と全く同じ状況で起きた殺人事件。結構普通の犯罪なので、どう面白みが出てくるのかと思ったが、なるほど。動機が狂ってるなあ。タイトルの元ネタを考えると作風を揃えてきたんだろうねえ。
 
以上。
ガッチガチの正道本格。それに特化した作品が大好物ならば読んで大当たりな作品だと思う。緋色冴子のキャラクターも凝りすぎていなくて、ミステリアスな感じがちょうどいいし。聡のちょっと卑屈だけどマジメなところも悪くない。ちょこちょこ人物の行動とかに違和感はあるけど、ロジックのためだからパズルもの的に考えたら完璧なんだろうな。