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密室蒐集家  (ねこ3.7匹)

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大山誠一郎著。文春文庫。

鍵のかかった教室から消え失せた射殺犯、警察監視下の家で発見された男女の死体、誰もいない部屋から落下する女。名探偵・密室蒐集家の鮮やかな論理が密室の扉を開く。これぞ本格ミステリの醍醐味!物理トリック、心理トリック、二度読み必至の大技…あの手この手で読者をだます本格ミステリ大賞受賞作。(裏表紙引用)
 
懲りずに大山さんを。硬質系なら大丈夫なはずなので。
1937年~2001年まで、それぞれの時代で起きた密室殺人を「密室蒐集家」と名乗る男が立ちどころに解決する5編収録の短編集。
 
「柳の園」
銃殺された教師を窓の外から目撃した女子生徒。しかし現場は密室。銃の入射角度や盗まれた腕時計などつじつまが合わないことばかりで…。動機はどうかと思うけど、咄嗟にしては綿密なトリックがすごい。ジャケットの穴のくだりなど、特に。
 
「少年と少女の密室」
愚連隊に絡まれていた少年少女を助けた柏木刑事だが、闇煙草の取引現場を見張っていた時にその時の2人が現場の隣家で死体で発見され…。2人の〇〇については最初に出てきた時にあれ?とは思った。これ何かあるなと。これってつまり、柏木刑事の中だけで起きていた密室ってことなんじゃ。。と思ってたらさらにひとひねりあった。
 
「死者はなぜ落ちる」
ビルから落下したホステスを目撃した、画家とその元カレ。ホステスは刺殺されていたが、なぜ犯人は刺してから3時間も現場に留まっていたのか? ややこしいことするなあ。。すぐに閃いたのもすごいし。。
 
「理由ありの密室」
恐喝を繰り返していた男が自宅で銃殺された。犯人はワープロを使い紐のトリックで施錠したが、様々な「別解潰し」が弄されていた。犯人の真の目的は? これをすぐに「別解潰し」だと理解する刑事が凄いな。。鍵が胃の中にあった理由とか、こんなの警察に分かるかな…面白いからいいけど。アリバイ崩しとフーダニットにもなっていて高度。
 
「佳也子の屋根に雪ふりつむ」
睡眠薬で自殺未遂した佳也子だが、近くに住む女医に助けられ数日入院することになった。しかしある朝女医が、自分以外に犯人がいない状況で殺害されていて…。佳也子踏んだり蹴ったりで気の毒だけど、トリックは思いつきさえすれば可能な気がする。これって結構ミステリを読む上で大事なこと。
 
以上。
密室蒐集家がどこからともなく現れて、事件の説明をした瞬間速攻解決するのが面白かった。ちょっとくらい悩めよ…。。年も取ってないみたいだし、警察庁にコネのある密室の精霊ってこと?(笑)。雰囲気もあるし、少し昔の日本の舞台に合ってるしいいキャラだなー。読ませるためじゃなく、推理だけにこだわったゴリゴリの本格ミステリなので、集中力が途切れたら真相見失う。どれも高度で綿密、レベルも高い。個人的には「2人とも利腕を捻挫していたので不可能」とか、「女性だったら~でしょう」「この年齢なら~だろう」という、都合のいい設定や密室蒐集家が決めた常識が推理の骨子になっているものが多くて、やっぱちょっと引っかかるなあ、この作家さん。まあ推理方法の一つではあるし推理ってそういうものなんだけど、ちょっと雑というか。まあ、評判はいいので私個人の好み。