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シタフォードの秘密/The Sittaford Mystery  (ねこ3.8匹)

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雪に覆われ下界と遮断されたシタフォード村の山荘。そこに集まった隣人たちが退屈しのぎに降霊会を試みる。現われた霊魂は、はるかふもとの村に住む老大佐の殺害を予言した! 駆けつけると、大佐は撲殺されており、しかも殺害時刻は、まさに降霊会の最中だった……絶妙のトリックが冴える会心作。(裏表紙引用)
 
ノンシリーズ。
犯人だけは覚えていたのでそこの楽しみは横へ置くことにした。ポアロやマープルといった人気のシリーズ探偵が登場しないながらも、典型的なクリスティーミステリーである。
 
この作品の楽しみどころは何と言ってもエミリーという魅力的な女性の存在だろう。婚約者が逮捕され、無実を信じながら、記者のチャールズと共に警察さながらの調査を行うキャラクター。勇気と行動力の塊のような女性であり、愛する男性のために尽くす健気さもある。ナラコット警部の存在が完全に霞んでしまった。頑張ってくれていたけどね。
 
鍵が開いているのに大雪の中なぜガラスドアから入ってきたのか、という点と、降霊術によって大佐が殺される時間まで予言されていたことがこの事件の肝である。犯人がこの人物ならば単純明快で、ついでに動機もうんざりさせられるような人間くさいものである。ある物がなくなっていたことを手がかりに、トリックに思い至る点が素晴らしい。特別これといって目立つ作品ではないが、シンプルながらも良作ではないだろうか。
 
さて、エミリーが最後に選んだパートナーはどちらだろうか。個人的には選ばれなかった彼のほうに行って欲しかったが…。エミリーはそういう女性ではない、分かっていたこと。