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怪談のテープ起こし  (ねこ3.8匹)

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三津田信三著。集英社文庫

自殺する間際にメッセージを録音して残す人がいる。それを集めて記事にしないか? 編集者時代の三津田に企画を提案したライターが突然失踪。後日、三津田の元に届いた1本のテープには何が。カセットやMDに録音された体験談に材を取った6つの怪異譚と、それらを連載し本になるまでの、担当編集者との裏話的なエピソードから成る作品集。この物語を読むあなたは恐怖を「体感」することになる。(裏表紙引用)
 
久々に三津田さんを。ずっとこの本のタイトル気になってたので。
 
ちょっと変わった体裁の怪談。作家三津田さんが編集者2人と新作の打ち合わせをする「序章」と、枠物語としての怪談をいくつか挟んだ後に挿入される「幕間(一)」「幕間(二)」、「終章」という構成になっている。要は、実話っぽいフィクション。各話に「まえがき」が入っていたり、読者に注意を喚起したり。お膳立てはバッチリという感じでさすが。
 
豪邸で、いないはずの伯母(らしきもの)に追いかけられるバイトの女子大生や、登山にやって来た男が目撃した一本足の足跡や、香典を届けるため一人旅に出た少年が出会った老人に不気味な話を聞かされる話や、一人暮らしのOLが毎朝出会う不気味な黒い男が自分の部屋まで近づいてくる話などなど…。いやあ、どれも怖かったよう!今感想書いてて怖いもん(読み終わりたて)。どれも怪異の原因や正体が分からないから余計怖いというか。。普通に怪談集、ってことで読んでも十分怖かったと思う。
 
ラストは単行本にはなかった文庫版出版に合わせての後日談が入っていて、これがリアルでまた怖い。最初に元編集者の吉柳という人から預かったテープに入っていた「死人のテープ起こし」が、それぞれのお話と意外な共通点を持っているっていうのが意外なまとめ方。そんなもんわかるか!って感じだったけど(日常的にあるものだし)、何か色々な人と現象がミックスされてて良かったな。編集者の時任さんが一体どうしたのかそれが一番の謎。
 
「黒面の狐」と繋がってるのかな?読まなきゃ。