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リベルタスの寓話  (ねこ3.8匹)

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島田荘司著。講談社文庫。

ボスニア・ヘルツェゴヴィナで、酸鼻を極める切り裂き事件が起きた。心臓以外のすべての臓器が取り出され、電球や飯盒の蓋などが詰め込まれていたのだ。殺害の容疑者にはしかし、絶対のアリバイがあった。RPG世界の闇とこの事件が交差する謎に、天才・御手洗が挑む。中編「クロアチア人の手」も掲載。(裏表紙引用)
 
御手洗潔シリーズ第26弾。
 
ボスニア・ヘルツェゴビナ共和国のモスタルで、奇怪で残虐な殺人事件が起きた。被害者は3人のセルビア人と1人のクロアチア人。セルビア人らは首が切断されており、クロアチア人の体は切り開かれ臓器が全て取り出されていた。そしてなぜか臓器の代わりに、飯盒の蓋やパソコンのマウス、ライトなどが各臓器に見立てられ詰め込まれていたのだ。さらに翌日、大学裏で瓶詰めにされた被害者らの男性器が遺棄されているのが見つかり…。
 
ユーゴスラビアの内紛についてよく学べる。。
挿入された「リベルタスの寓話」(著者オリジナルらしい)では病死した子どもの心臓が神となり鎧のなかで蘇る(すごく簡単に言うと)。これは結構面白かった。そのお話と前半の事件がなんとなくリンク。
 
そして間に挟まれた中編「クロアチア人の手」。俳人として芭蕉記念会館に招かれた2人のクロアチア人のうち1人が会館の貴賓室でピラニアの水槽に頭を突っ込んで溺死していたという事件。名前が内紛で出てきた2人なのでなんかあるなとは思えるのだが、舞台が現代日本なので取っ付きやすさはある。入れ替わっていた部屋、絶対開かない密室、繋がっている水槽、爆死した容疑者などなど。相変わらず「犯人の独白」ふうで終わる。このお話だけで1冊持ったと思えるぐらい面白かったのだが。
 
そしてそして後半が始まる。御手洗さんが登場し推理し解決するのだが、まあ専門知識がないと絶対分からないので「天才だなあ」としか。いや、突飛だけど整合性はあるので凄いのだがね。。RPGやってる人々のくだりがちょこちょこ挿入されるのだが、これ必要だったかなあ?なんだかいたずらに話を複雑にしただけのような気が。ラストの老人の告白も、確かに衝撃だがそこまで引っ張るほどでもないしだいたい想像ついてたし。。なんか最近の作品、凝りすぎててもったいない感じ。せっかく他の追随を許さないぐらいのレベルの面白さを持ってるのに。。あと、御手洗さん石岡くんに冷たすぎない?落ち込みすぎてまた病気になるぞあれ。